耐震補強・既存不適格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 06:18 UTC 版)
「阪神・淡路大震災」の記事における「耐震補強・既存不適格」の解説
この地震が大惨事となった最大の理由は、老朽木造瓦屋根の住宅が多かったことであるが、その他の理由の一つに、近畿地方の瀬戸内海岸では他の地方に比べて地震の発生が少なかったことが挙げられる。地震の専門家の一部は、小さい規模の地震すら起こらないことで、エネルギー(ひずみ)の蓄積が起こっており、ひとたび地震が発生した場合には規模の大きなものになる危険性をはらんでいることを述べていた。 しかし、1916年(大正5年)の明石海峡付近で発生した M 6.1 の地震以降、約80年間顕著な地震活動が無かったことから「近畿地方は地震が少ない。仮に起こったとしてもそんなに大きな地震ではないだろう」といった“実体験”による過信から、「近畿地方では大きな地震は起こらない」とする誤解の広まり、または、地震自体を意識することが少なく専門家の指摘を信用する人間も少なかった。歴史的には近畿地方は幾度も大地震に襲われている(地震の年表を参照のこと)。歌舞伎『地震加藤』は、豊臣秀吉の不興を買っていた加藤清正が慶長元年(1596年)9月の慶長伏見地震で、伏見城から秀吉をおぶって逃げる話となっている。神戸は地震予知連絡会の特定観測地域にも指定されていた(名古屋・京都・大阪・神戸地区として指定されていた)。 それまでの大地震の発生する構造については、太平洋プレートやフィリピン海プレートが日本海溝や南海トラフにおいてユーラシアプレートの下に滑り込み、そのプレートの跳ね返りによって発生するもの(海溝型地震)ばかりが注目されて内陸の活断層のずれによる直下型地震の発生はさほど注目されていなかった。実際に、これらのプレートの境界の近くに位置する関東地方と東海地方と紀伊半島においては、大地震(関東地震・東海地震・東南海地震・南海地震など)の発生する可能性が最も高い地域として防災訓練や建造物の補強など徹底した対策が実施されて来た。ところが、近畿地方(紀伊半島)でも、太平洋岸である三重県と和歌山県とは対照的に、瀬戸内海岸である大阪府と兵庫県は無警戒に近い状態であった。 北海道・東北地方・北陸地方などの豪雪地帯であれば、地震の多発地帯以外でも「雪」という重量物が屋根の上に積み重なる前提に家屋が建てられるために縦方向からの力に強くなるので、結果的に「地震」など揺れにも強い構造となることが指摘されている。ただし、2004年(平成16年)の新潟県中越地震において豪雪地帯の建物が少なからず倒壊・損壊したことで、耐雪構造と耐震構造を分けて考える必要性が指摘されるようになっている。 その後のビルディングも含めた物件を建築や補修する際には、阪神・淡路大震災における被害を教訓とした上に最低限度の耐震性を考慮した構造に変わっていっている。前述の「高架構造」になっている高速道路や一般道路、鉄道などの橋脚」の構造上の脆弱さが指摘され、行政主導のもとで補強工事 が施工されていった。
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