死語 (言語)
(絶滅言語 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/01 14:37 UTC 版)
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言語学 |
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言語の変化と変異 |
理論 |
応用分野 |
関連項目 |
言語としての死語(しご)とは、一般に自然言語のなかで日常話者が存在しなくなったため、実際には用いられない言語を意味する。
学校教育による支配階級の言語の強要や、植民地などにおいては英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語・ドイツ語などの宗主国の言語が強まり、少数民族などの固有の言語は世界各地で言語消滅、つまり絶滅の危機にさらされている。
日常における口語として死語となっても、典礼言語や古典言語、学術言語などの文語として現代でも用いられるものもある。
概説
日常話者が完全に存在しなくなった「死語」であっても、古典アラビア語、ラテン語、古典中国語、古典ギリシア語のような言語は、文語として現代でも使用されている。厳密にいえば、死語を「口語としての死語」と、「文語としての死語」、そして「完全な死語」の3つに分けることが可能である。上記の古典語は、口語としては死語であっても文語としては死語ではなく、ゆえに完全に使用が絶えたという意味での死語でもない。
例えば、古典中国語で詩を書く習慣は21世紀でも日本や中国の一部で健在である。またラテン語は、現在でも学術用語として膨大な数が造語され続けており、特に植物学の論文においては2011年12月までラテン語で記述することが正式発表の要件であった[1] (国際藻類・菌類・植物命名規約も参照されたい)。このなかでも、古典アラビア語はもっとも広く使われる。
話者が絶えてしまったために発音がわからなくなっている言語もあるほか、文字文化を持たなかった言語では存在そのものが絶えてしまったケースもみられる。この問題において、最も顕著な事例はアメリカ先住民やアボリジニの各部族にそれぞれ伝えられていた言語であろう。幸運にも民俗学者やアマチュアによって録音が残されていたため解明される場合もあるが、250(26系統から28系統)ともいわれた各アボリジニ言語の大半は、彼らがたどった歴史とともに既に失われているとされる。
一度死語となった言語から、母語話者を再生させることは非常に難しい。歴史上、これが成功した例はヘブライ語のみである。ただし、ヘブライ語は紀元後1世紀以来、日常での母語話者がいない「口語としての死語」だったが、決して「まったく用いられない状態」、つまり完全な死語だったわけではない。学者や聖職者などの教育のあるユダヤ人によって文語として使われ、2000年近く継承されていた。19世紀には、ハスカーラーによりヘブライ語の文語としての使用領域は格段に広がった。それまでイディッシュ語が担っていた世俗文学などにも及ぶようになり、新語や外国語からの訳語の構築もこの時期に始まった。20世紀初めにエリエゼル・ベン・イェフダーは、最大限の言語学的努力により古典ヘブライ語を元に再構築された「ヘブライ語」を、自分の息子に教え込むことで母語話者を再生した。
第二言語として復活した言語には、マン島語や、ケルノウ語とも呼ばれるコーンウォール語などがある。ただし、音標文字で記されていない限り発音が復元できないので、古典中国語のような場合は口語としての復活は困難である。
様々な死語
古代エジプト語の発音は、かつては完全に失われたと思われていたが、表記をアルファベットに置き換えたコプト語として、現存するエジプトのキリスト教徒に存続していたことから解読が進んだ。また、コプト語を「完全な死語」としないための保存調査・復活運動が進められている。
ゴート語や古代教会スラヴ語ははるか昔に死語となったが、豊富な文献から当時の状況が分かっている。プロシア語やフリュギア語は文献がほとんどないため、話されていた記録しか知られていない。
トカラ語やヒッタイト語は、20世紀になってから新たに発見された死語であり、単なる死語ではなくインド・ヨーロッパ語族における様々な新発見、新研究の要素を含んでいた。
オスマン語は、オスマン帝国の滅亡後公用語の地位を失い、徐々に死語になっていったが、現在もオスマン帝国研究者によって使われている。
サンスクリット語は、日常語として使用されているかについては疑問が呈されており、死語に分類する意見もある。しかしインドの国勢調査では、現代でもサンスクリット語を母語として申告する人々が少数ながら存在している。2001年にはインドで14,135人が、2011年にはインドで24,821人、ネパールで1,669人がサンスクリット語を母語とすると回答した。また、サンスクリット語のニュース番組が放送されていることや、サンスクリット語を用いた新聞及び雑誌が発行されていることから、死語に分類するべきではないとする意見も多い。
出典
- ^ 仲田崇志,永益英敏,大橋広好 (2011-12). “第4回「第18回国際植物学会議(メルボルン)で変更された発表の要件:電子発表の意味するところ(Changes to publication requirements made at the XVIII International Botanical Congress in Melbourne: What does e-publication mean for you. Knapp, S., McNeill, J. & Turland, N.J. Taxon 60: 1498-1501, 2011)」 の紹介と日本語訳” (PDF). 日本微生物資源学会誌 (日本微生物資源学会) 27 (2) 2016年5月2日閲覧。.
関連項目
- 死語の一覧
- Fossil word - 使われなくなったが、特定の文脈などに登場する語。
- 危機に瀕する言語
- 少数言語
- 地球ことば村・世界言語博物館(少数話者言語・消滅危機言語〔消滅寸前言語〕の保護と、その母語話者の権利の擁護を訴える特定非営利活動法人)
- 典礼言語
- ラテン語版ウィキペディア
- 漢文版ウィキペディア
- 古英語版ウィキペディア
外部リンク
- 絶滅言語のページへのリンク