結成と勃興
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 16:49 UTC 版)
コルネリウ・コドレアヌは国家キリスト教防衛協会(National-Christian Defense League、NCDL)というルーマニア政党においてナンバー2の地位にあったが、1927年に離党した。そして彼は、大天使ミカエル軍団を創設した。この軍団はルーマニア正教会を奉じていた。明確に宗教色を持つ点では、当時の他のヨーロッパ諸国のファシズム運動とは対照的であった。Ioanidによると、この軍団は「キリスト正教の堅い考え方を政治教義に積極的に取り込んでいて、近代ヨーロッパではまれな宗教的イデオロギー構造を持つ政治運動となった」。 また、この軍団は農民や学生層に多くの支持者を抱えており、この点でも、退役軍人を主な支持層とする他のファシズム運動とは異なっていた。とはいうものの、ファシズム特有の暴力傾向はこの軍団にもあって、政治的な暗殺も行った。 コドレアヌはカリスマ性を持つ指導者で、目を見張るような見せ場を上手く演出するなどプロパガンダが巧みだったことで知られる。軍団は、軍隊行進や宗教行事を誇示し、「奇跡」を演出したり愛国的な賛美歌や軍の祝歌を上手く使ったりして、自分たちがこれまでの汚職と利権がらみの集票組織政党(NCDLを含む)に変わる存在だと誇示した。周辺地方の人々も、反共主義、反ユダヤ、反自由主義、反議院内閣制などの原理に共鳴して、奉仕活動や仁愛精神の運動を広めることで軍団を支援した。 当時の聖職者を中心としたファシズム運動が他国でもそうだったように、鉄衛団は明確に反ユダヤ主義の立場をとっていた。そして、「ユダヤ教のラビによるキリスト世界の侵略が、フリーメイソン、フロイト心理学、ホモセクシュアル、無神論、マルクス主義、ボルシェヴィキ思想、スペインの内戦など予想しなかった変幻自在な形で社会をひそかに侵食している」という考えを推し進めた。 1933年12月10日、ルーマニアの自由党員である総理大臣イオン・ドゥカ(en:Ion Duca)は、鉄衛団の結団禁止を決めた。その報復として、1933年12月29日、シナヤ駅のプラットホームでドゥカは鉄衛団員に暗殺された。
※この「結成と勃興」の解説は、「鉄衛団」の解説の一部です。
「結成と勃興」を含む「鉄衛団」の記事については、「鉄衛団」の概要を参照ください。
- 結成と勃興のページへのリンク