経済政策との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 17:37 UTC 版)
配分方法で社会を区分すると、伝統経済、指令経済、市場経済の3つに分けられる。2005年現在のほとんどの地域では市場経済による資源の配分方法が採用されている。資源の分配は可能な限り公平に、配分は効率的に行う必要があるが、効率と公平はトレードオフの関係にある。 経済学が想定する再配分政策は「経済主体がそれぞれ自ら意思決定を行い、私的所有が保障されていること」を初期条件に設定している。経済学では、富の再分配は、パイの切り方に喩えられることがしばしばである。効用の観点から見た場合、パイの切り方を変えることで、パイを食べることで得られる主観的な満足感の総計が変化することが問題とされる。これに対して効率性の観点から見た場合、パイの切り方によって、パイの客観的な大きさ自体が変化することが問題とされる。 低成長化で所得のパイが増えない中での低所得者の所得減少、企業のリストラを背景とした中高年の所得格差の拡大、若年層の高失業化に伴うフリーターの増加は資産形成に大きな影響を与える。 再分配の問題については、人々の勤労観・公平感を刺激するため価値観の衝突が起こりやすい。 所得再配分を肯定する立場からは、経済全体のアウトプットの低下がないかぎり、経済全体の効用の総計を増大させるものとして、限界効用逓減の法則に基づく功利主義の見地において肯定される。また、より高い消費性向を有する低所得者への再分配を肯定する見方もなされており、具体的には、生産設備の過剰によって設備稼働率および投資収益率が低下しているような不景気の局面において、有効需要の増加をはかり、それによって経済を拡大させるというものである。 所得再分配に否定的な議論では、分配を受ける者にとって生活の不安定性を解消して労働の必要性を減少させ、労働意欲を阻害するとされる。また、分配のための収奪を受ける者にとっては、自己の労働から得られる限界収益が低下させられることにより、労働意欲が低下する。以上より、所得再分配は、経済全体としてのアウトプットの低下を招くという(インセンティブ・平等のトレードオフ)。経済全体としてのアウトプットの増加をはかるためには、所得再分配を抑制することが有効であるとする。具体的には、より高い貯蓄性向を有する富裕層の減税による貯蓄の増加と労働意欲の向上、合わせて企業減税による投資の増大によって経済を拡大させるというものである。歴史的にはレーガノミクスなどの経済政策がこの考え方に基づいている。 所得再分配を累進課税や負の所得税、日本の子ども手当など個人に対する一律給付と、特定産業に対する補助金や小規模宅地所有者への優遇税制など個人の生活水準以外の基準に基づく再分配に分類し、後者は市場による資源配分をゆがめ非効率な産業の温存をもたらすとする見解もある。
※この「経済政策との関係」の解説は、「富の再分配」の解説の一部です。
「経済政策との関係」を含む「富の再分配」の記事については、「富の再分配」の概要を参照ください。
- 経済政策との関係のページへのリンク