直接防護力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 10:12 UTC 版)
防護力に関しては、新たに開発した複合装甲を使用している。また複合装甲以外の防弾鋼板も「結晶粒微細化鋼板」と呼ばれる鋼板が採用されている。この鋼板は多結晶体である鋼板内の結晶粒を微細化することで、結晶粒界の面積を増大させて敵弾による応力を分散させている。また粒界面積の増大は粒界に偏在する不純元素の濃度を薄め、敵弾命中によるへき開型の亀裂伝播を粒界が阻止する効果がある。これにより防御力を維持したまま軽量化を図っている。 2006年に公表された防衛省技術研究本部のウェブサイト内の資料である「公共調達の適正化について(平成18年8月25日付財計第2017号)に基づく随意契約に係る情報の公表(物品役務等)」には、岐阜県の神岡出張所にて実施される正面要部耐弾性試験に関する内容が記載されている。これによると新型試作砲である120mm架台砲IV型、そして新型試作砲弾である徹甲弾IV型を用いること、それらを用いた射距離250メートルの射撃により砲塔正面左右および防楯、車体正面モジュール型装甲の耐弾性評価を実施するとされる。 列国の軍隊の現存する様々な砲弾に対して全て抗堪できる優れた防護能力を持っている。 炭素繊維やセラミックスの装甲板への使用や、小型化などにより全備重量は90式より約12%ほど軽量になったとされる。しかし複合装甲だけに限って見れば砲塔車体共に90式より重量が増しており、特に車体は二倍以上の重量がある。これはチャレンジャー2戦車がイラクで撃破された戦訓を取り入れたものと考えられている。 正面要部(砲塔・車体正面)には90式と同じく複合装甲が組み込まれており、90式は内装式モジュール装甲であると言われているが10式戦車の場合は砲塔正面、車体正面とも外装式モジュール装甲と報じられている。装甲板は取り外し可能なので、任務の性質や重量制限などに応じて、装甲の程度を選択できる自由度を持つ。 耐弾試験では155㎜砲弾の弾片、至近距離からの35ミリ機関砲による側面掃射、対戦車ロケット弾による側面攻撃、また付加装甲を装着してのトップアタック対戦車ミサイルによる攻撃にも全て抗堪し非常に優秀な防護力を保有している事がうかがえる 正面要部には、複数本のボルトで固定された装甲板が確認できる。砲塔部の装甲板は先端が楔形であり空間装甲としての効果などがあると考えられている。また、操縦士用ハッチ上方の一部の部分は内側に引き込まれる形で垂直になっており、この垂直部分を隔てた更に奥に複合装甲からなる主装甲が存在する。車体部の装甲板の内側には前照灯が確認できる。砲塔部・車体部どちらの装甲板も、90式のキャンバスカバーのように正面要部を覆うようにボルトで取り付けられている。 90式の防盾は正面投影面積が左右対称だったが、10式では直接照準眼鏡と連装銃のない側である防盾右半分の面積を小さくしている。 砲塔本体の両側面には分割式の増加装甲が装着されており、試験映像ではこれが取り外された状態で走行・射撃試験が行われている。この増加装甲は空間装甲と物入れを兼ねており、必要に応じて内部に装甲を追加するという見方がある。この根拠として、ニコニコ超会議2の会場への10式戦車の搬入は44トンの状態とされる側面や正面の増加装甲をつけた見た目のまま制限重量40トンの73式特大型セミトレーラで行われたことがあげられる。以上のことから通常外部に見えている正面や側面の増加装甲とされるものは増加装甲のカバーまたは物入れであり、10式戦車の44トンの状態の増加装甲は装甲カバーの内部に全く見えない形で装着される事がわかる。また、砲塔上面は二重構造で爆発反応装甲も追加できるとされているほか、砲塔と車体の側面には複数種類の増加装甲を装着可能とされているが最大限装甲を付加したとされる48トンの状態は一度も公開されたことがなくどのような外観になるかは不明である。
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