発達性ディスレクシアなどによる読み書き学習の困難
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「UDデジタル教科書体」の記事における「発達性ディスレクシアなどによる読み書き学習の困難」の解説
学習障害のうち、文字の読み、または書きの習得に困難がある障害はディスレクシアと呼ばれ、これは学習障害の中で最も多い。全般的な知的発達には遅れがないものの、文字や文字列を音に変換すること(音韻処理)に障害があり、小学校高学年になってもひらがなが読めない、音読や黙読に時間がかかるというような症状が現れる。文字の認識が難しいことから、字の書きにも困難を示す人(書字障害)も多く、漢字がなかなか覚えられない、覚えてもすぐに忘れてしまうという場合がある。日本語では問題がなかったものの、綴りと読みに不規則なものが多い英語の学習が始まると症状が明らかになる人もいる。ディスレクシアは脳神経的な原因により現れるが、その他の全般的な知能や視覚などには障害が現れないため、できないことが周囲に理解されず、努力を怠っているだけではないかといった誤解を生むことが多い。8歳から12歳までの小学生を対象に行われた調査では、ひらがなの読みに困難があるものが0.2%、書きに困難があるものが1.6%、漢字の読みに困難があるものが6.9%、書きに困難があるものが6%であったと報告された。通常の学級に在籍する小中学生について2012年に文部科学省が教師に対して行ったアンケート調査では、全体の2.4%の児童・生徒が「読む」又は「書く」に著しい困難を示すとされた一方で、校内委員会において特別な教育的支援が必要とされた児童生徒の割合は低く、適切な支援や指導が受けられていない児童・生徒がいる可能性がある。 読む、書くなどの能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示し、特別な指導を必要とするような児童・生徒に対しては、2006年度から通級による指導が行われるようになった。行間や字間を広くとる、紙や背景の色を変える、振り仮名を振る、読み上げ機能やキーボード入力などのICT機器の機能を活用することなどの支援が行われている。大学入学共通テストにおいても、試験時間の延長、マークシートの代わりにチェック解答を用いること、拡大文字問題冊子の配布、注意事項などを文書で伝達すること、人による問題文等の読み上げなどの配慮を申請することができる。このような配慮に加え、読み書きの能力に対する直接的な指導も行われている。 他の要因による読み書き学習の困難として、特定の波長の光に対する感受性が高いために起こるアーレンシンドローム(英語版)やscotopic sensitivity syndrome (SSS)と呼ばれる障害が報告されている。紙面の一部が白くなる、文字がぼやける、動く、重なる、ゆがむというような見え方をして、特に白い背景に黒い文字が印刷されている場合に現れる。文字が読みにくいため字の習得が困難で、自分の書いた字も読みにくいために字を書くのにも困難が現れるといった、ディスレクシアと似たような症状があらわれるため、両者が混同されることが多い。アーレンシンドロームの症状は、カラーレンズやカラーフィルムで改善する。読み書き障害の自覚がない人の中にも、カラーフィルムを通して見ることで読解速度が向上する人がいて、そのような人も合わせると、欧米では有症率は20%から38%と推定されている。 欧文書体では、Dyslexie(英語版)やOpenDyslexic(英語版)などのディスレクシアに配慮したフォントが開発されている。書き文字に近づけ、似た字の差別化が行われていて、鏡文字と間違えないように「b」と「d」などの字は反転させたときに違う形になるようにするなどの工夫がされている。2020年度から小学校で英語教育が始まることに合わせて東京書籍が開発したフォント「NHhandwriting」でもこのような配慮が行われた。「UDデジタル教科書体 欧文」でもこれに合わせて同様の配慮が行われている。
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