産業技術への応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 04:07 UTC 版)
ラクトバチルスやラクトコッカスといった乳酸菌は、酵母やカビなどと組み合わせられて、チーズや漬物、醤油、ザワークラウト、酢、ワイン、ヨーグルトといった様々な発酵食品の生産において何千年もの間使用されてきた。 また、細菌が様々な有機化合物を分解する能力は顕著であり、廃棄物処理やバイオレメディエーションにも使用されている。石油に含まれる炭化水素を消化することができる細菌は、石油流出の浄化によく利用されている。プリンス・ウィリアム湾では、1989年のエクソンバルディーズ号原油流出事故後、自然発生する石油分解細菌の成長を促進するために肥料が追加された。これは、油であまり厚く覆われていないビーチにおいては効果的であった。細菌はさらに、産業毒性廃棄物のバイオレメディエーションにも使用される。化学産業において、医薬品や農薬として利用できるような鏡像異性的を持つ純粋化学物質の生産においても、細菌は重要な存在である。 細菌は、生物的害虫駆除において農薬の代わりに使用することもできる。これには通常、グラム陽性の土壌に生息する細菌であるバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、BTとも呼ばれる)が含まれる。この細菌の亜種は、DipelやThuricideなどの商品名で、鱗翅目特有の殺虫剤として使用されている。それらの特異性のために、人間、野生生物、花粉交配者、および他のほとんどの益虫にほとんど影響を与えないため、これらの農薬は環境にやさしいと見なされている。 細菌は急速に成長する能力を持ち、操作が比較的容易であるため、分子生物学、遺伝学、生化学など分野で頻繁に利用される。例えば細菌のDNAを変異させ、その表現型を調べることで、細菌の遺伝子、酵素、代謝経路の機能を調べることができ、得られた知識をより複雑な生物に適用することができる。細胞の生化学を理解することで、様々な生物において、大量の酵素動態や遺伝子発現データに基づく数学的モデルを作ることができる。いくつかのよく研究された細菌では研究が進められており、例えば大腸菌の代謝モデルが作成され検証が進められている。細菌の代謝や遺伝学の理解は、インスリンや成長因子、抗体などの治療用タンパク質の生産のために細菌を利用するという、バイオエンジニアリングのためのバイオテクノロジーに繋がる。 細菌株のサンプルは研究において重要であるため、生物学的リソースセンター(Biological Resource Centers)で分離および保存される。これにより、世界中の科学者が菌株を確実に入手できる体制が整っている。
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