環境中の生体異物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 05:01 UTC 版)
詳細は「環境生体異物(英語版)」を参照 生体異物には多くの種類があるため下水処理システムの課題となっており、それぞれをどのように除去するか(または除去する価値があるかどうか)が問題となる。 生体異物の一部には、分解されにくいものがある。ポリ塩化ビフェニル(PCB)、多環芳香族炭化水素(PAH)、トリクロロエチレン(TCE)などの生体異物はその難分解性のために環境中に蓄積し、その毒性と蓄積によって環境問題となっている。これらは特に地下環境や水源で問題となっており、生物システムに対しても影響を与え、ヒトの健康に影響が生じる可能性がある。環境への生体異物の導入や汚染の主な原因の一部は、医薬品、化石燃料、パルプや紙の漂白、農業などの大規模産業によるものである。問題となる物質はプラスチックや農薬などの合成有機塩素化合物であったり、PAHなどの天然由来の有機化学物質であったり、原油や石炭の一部の留分であったりする。 このような環境汚染問題に対しては、微生物による生体異物の分解、すなわちバイオレメディエーションが有効な解決策となると考えられる。微生物は、環境中に導入された生体異物に対して遺伝子の水平伝播によって適応し、これらをエネルギー源として利用することができる。微生物の代謝経路を操作することでこの過程にさらに変更を加え、特定の環境条件下でより望ましい速度で有害な生体異物を分解するようにすることができる。バイオレメディエーションのメカニズムには、微生物を遺伝子工学的に操作する方法と、自然に存在する生体異物分解微生物を単離する方法がある。特定の生体異物に対する代謝能力を担う微生物の遺伝子を同定する研究が行われており、こうした研究を利用して特異的に微生物を改変することが可能であると考えられている。現に存在する代謝経路を他の生物で発現できるようにするだけでなく、新たな代謝経路を創出することも可能なアプローチの1つである。 生体異物は環境中で限られた領域に存在し、地下環境などアクセスが困難な場合がある。分解を担う生物がこうした化合物にアクセスできるようにするため、走化性を高めるなど、移動性を高めるように改変を行うことができる。バイオレメディエーションの限界の1つは、特定の微生物が適切に代謝機能を発揮するために最適な条件が存在し、これは実際の環境条件下では満たすのが困難な場合があることである。場合によっては、生体異物の分解に必要なすべての代謝過程を単一の微生物で実行することができないことがあるため、栄養共生性の微生物コンソーシアが利用されることがある。この場合、一群の細菌が連携して働き、ある生物からの最終産物が他の生物によってさらに分解されることとなる。ある微生物の生成物が他の微生物の活動を阻害する場合もあり、そのためバランスの維持が必要である。 多くの生体異物がさまざまな生物学的影響をもたらすが、それらはバイオアッセイによる特徴づけにも利用される。ほとんどの国では、生体異物となる農薬の販売登録の前に、ヒトへの毒性、生態毒性(英語版)、環境中での残留性などのリスク要因について幅広く評価を行う必要がある。例えば、除草剤のクロランスラムメチルは、土壌中で比較的迅速に分解されることが登録の過程で判明した。
※この「環境中の生体異物」の解説は、「生体異物」の解説の一部です。
「環境中の生体異物」を含む「生体異物」の記事については、「生体異物」の概要を参照ください。
- 環境中の生体異物のページへのリンク