海外の里親制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 09:41 UTC 版)
欧米では子供の個人の権利を守るため、福祉施設などに預けられた子供を家庭的な環境の元で育てるように、養子や里親の元にすみやかに委託されるよう国や行政が伝統的に取り組んできている。 現在は、日本における児童養護施設に該当する施設が実質的に廃止されている国も多い。日本はこれらの取り組みが遅れており、例えば2010年前後の国際比較では制度の違いがあるものの、里親委託率の上位ではオーストラリア93.5%、アメリカ77%、イギリス71.7%で、低率なイタリアでも49.5%であるに対し、日本では14.8%(2013年3月)であり、国連や人権団体などからそのことを改善するよう勧告されている。さらに欧米諸国においては、要保護児童のケアにあたっては「パーマネンシー(施設でも里親でもない永続的な家庭で育つこと)」という概念が重視され、児童を実親の元に戻すための親子を一つの単位としたケアが最優先される。パーマネンシーの理念とは、児童にとって、「養育者」や児童を取り巻く「養育環境」を安定的で継続的なものに保つべきである、とする考えである。即ちパーマネンシーの理念における「パーマネンス(permanence)」とは、「養育者」及び「養育環境」の「安定性(stability)」と「継続性(continuity)」を意味する。このパーマネンシーの理念に基づき、社会的養護を必要とする児童の措置プロセス、即ち、パーマネンシープランニング(permanency planning)が遂行される。養育者の安定性と継続性とは、ある養育者が一貫して児童の養育にあたるべきである、ということを意味する。パーマネンシープランニングのもとでは、養育者の安定性と継続性を維持するために、児童と養育者との間に血縁的または法的な関係性が確保できるような措置が要保護児童に対して行われる。家庭外の場所へ措置された児童に対しては、第1に実親家庭復帰が目指される。しかし、実親家庭復帰が不可能である場合、第2に養育者の安定性、継続性を目指すべく、養子縁組をはじめとする他の形態への処遇が検討される。この場合、専門的な施設(specialized group care)への処遇は、最終的な手段として位置づけられる( Maluccio and Fein 1983: 198)。それが困難な場合には積極的に養子縁組を推進する傾向にあり、実は日本の里親に相当する制度は徐々に縮小傾向にある[要出典]。海外では独身者でも養子や里子を迎えるできる国もある。有名人ではメグ・ライアンやキャリスタ・フロックハートなどが独身時代に子供を迎えた。(どちらも里子ではなく、養子として迎え入れている。) アメリカでは親の麻薬常用などの影響をうけて心身ともに障壁を持った子供が里子となっているため、里親の減少を招いている。また里子期間が長引くと里親家庭から里親家庭へとドリフト(たらい回し)が生じることで、不安定な生活を送ることになる負の面もある。里親ケアの子どもの20%が3つ以上の里親ケアを受けた経験があり、里親ケアの子どもたちは措置変更の不安を抱えている。里親家庭で虐待が発生する場合もあり、2000年1つの州では1~3%の発生率であった。子どものたらい回しは西欧諸国でも問題視されているが、千葉市などの里親制度推進事業受託者NPO法人キーアセット代表渡邊守はアイルランドで8年間に60回委託先が替わったという19歳の女の子に会ったことがあると語っている。 オーストラリア等では、19世紀中旬には道徳的理由及びより安価な代替的選択肢として、施設ケアより里親制度が推進された。19世紀末には、オランダでは施設ケアは里親ケアの2倍の費用を要している。これらのことから、現在では、諸外国では半数以上の要保護児童が里親委託で生活している。また専門化も進み、現在では、カナダ、フランスで障害などを持つ子供の専門的な里親もいる。オランダでは幼少期に適切な親子関係を経験していない子が抱える情緒的な問題に対応できる専門里親もいる。フィンランドでは、精神障害を持つ児童の養育へは、通常より上増しされた報酬が支払われている。
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