法人化の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 15:16 UTC 版)
国立大学の法人化に際して国からの支援が縮小されることや、運営に国の干渉が強まることが懸念された。 平成27年に国立大学協会がまとめた国立大学法人の直面する問題点としては、運営費交付金、附属病院、施設整備費補助金、寄付金税制、競争的資金、制度・規制の6項目が取り上げられている。 運営費交付金が法人化後11年間で12%減少した一方、消費税、電気料金、電子ジャーナル料などで諸経費が高騰し、常勤教職員の減少、教員の多忙化による論文数の停滞、学長裁量経費の確保も困難となる悪影響が顕著に出たこと、私立大学とは異なる税制上の扱いのため、寄付金額が伸び悩んでいること、競争的資金の使い勝手の向上が必要といったことが示された。 佐和隆光は滋賀大学学長時に、科学・学術研究の国際競争力が低下したこと、運営費交付金が毎年1%減額されるために、教員人件費の徹底的な節約を実施したことにより、教育の質の低下が起きたこと、外部資金の獲得競争では東京大学の一人勝ちが続くなど、大学間格差が拡大したことを指摘している。 学研は2013年の報告で法人化後に、入試ではこれまで国立大学協会の決定が尊重されていたが、京都大学による後期入試を廃止、センター試験地歴・公民の選択科目での4単位科目の指定が一部大学に留まるなど入試の複雑化による混乱が生じたこと、将来的には国立大学の統廃合が避けられないことなどが報告した。 研究費調達は各大学の自助努力が求められるようになったため、寄付を募るなど運営が私立大学に近いものになってきている。 毎年政府から交付される運営費交付金は、毎年、前年度比1%削減という効率化係数が適用されて、漸減することとなっている(右のグラフも参照)。したがって、必要な人数の教員や職員を確保できない事態が発生している。これは、国立大学の特徴である少人数教育を年々困難にしつつある(例えば教職・学芸員科目以外における非常勤講師の一斉採用停止など)。このため大学によっては、特に文科系において教員が抜けた場合に補充が行われないという事態が起こり、大学カリキュラムに歪みが発生している。これに伴い、一部では専攻閉鎖等も危ぶまれている。 法人化により一斉に新設された「理事」に、ほぼ例外なく文部科学省の職員が出向している。したがって、法人化は文科官僚のポジション増設になっているとの批判があるうえ、国立大学の理事から理事へとわたりが行われていることも指摘された。また、中期目標の作成、評価制度の施行により、むしろ文部科学省による各大学への関与は増大しているとの見方もある。
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