気の毒な不義の子のこみいった物語(第826夜 - 第844夜)
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「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「気の毒な不義の子のこみいった物語(第826夜 - 第844夜)」の解説
昔、3人の学者がいて、帝王(スルタン)に近づこうと、王宮の前で派手な喧嘩をした。3人は捕らえられ、帝王の前に引き出されると、それぞれ「宝石の系譜学者」「馬の系譜学者」「人の系譜学者」と名乗ったため、帝王は3人を王宮に留め置き、パンと肉を1人前ずつ与え、能力を試すことにした。 しばらくすると、隣国からの贈り物があり、中に美しい透明な宝石があったため、宝石の系譜学者に鑑定させることにした。すると、「この宝石は無価値で、中に虫が入っている」と言ったため、帝王は死刑にしようとしたが、総理大臣が無実の者を死刑にすると神の前で弁明できなくなると諌めたため、宝石を割って確かめることになり、割ると虫が入っていた。帝王は宝石の系譜学者のパンと肉の割り当てを2倍にした。 しばらくすると、ある部族から馬の贈り物があり、見事な黒鹿毛の馬であったため、馬の系譜学者に鑑定させることにした。すると、「この馬は見事な馬であるが、瑕があり、それは母が水牛であることである」と言ったため、帝王は怒り死刑にしようとしたが、総理大臣が諌めたため、血統証を調べさせたところ確かに母は水牛と記載してあった。帝王は馬の系譜学者のパンと肉の割り当てを2倍にした。 帝王は、自分の愛妾を人の系譜学者に鑑定させることにした。すると、「真に美しく、多くの長所を持った女性であるが、母方は流浪民ガージャー(Ghajar)の遊女である」と言ったため、帝王は怒り死刑にしようとしたが、総理大臣が諌めたため、愛妾の父である王宮の執事を召し出し事情を問い正した。すると、執事は次のように答えた。 執事は若い頃砂漠の隊商の護衛をしていて、あるとき、流浪民ガージャーの遊女の一団の野営地近くに留まったが、ガージャーの一団が去った後に、5歳ほどのガージャーの女児がはぐれて残っており、引き取り育てることにした。女児は褐色の肌の美しい乙女に成長し、執事と結婚し、生まれたのが帝王の愛妾であった。 帝王は人の系譜学者のパンと肉の割り当てを2倍にした。 帝王は、人の系譜学者に、今度は自分自身を鑑定させることにした。すると、人の系譜学者は人払いをし、「帝王は不義の子である」と答えた。帝王は愕然とし、母の部屋に行き、真実を語るように迫った。すると帝王の母は次のように語った。 帝王の母は先帝の第1の正妻であったが、帝王には子種がなく子供ができなかった。先帝は第2の正妻を娶り、第3の正妻を娶ったがやはり子供はできなかった。先帝は悲しみ、憂鬱な日々を過ごされた。そこで、帝王の母は、王宮の若い料理人を部屋に呼び、交わった後口封じのため殺し、死体を庭に埋めた。こうして今の帝王が生まれたが、先帝は大いに喜び、王宮の人々に多くの品物を下賜され、40日間の大宴会を開き、喜びを共にされたのであった。 帝王は、人の系譜学者になぜ不義の子であると思ったかを尋ねると、人の系譜学者は「帝王は3人の学者が功績を示したとき、パンと肉の割り当てを倍増しただけで、帝王の褒美と思えぬけちな褒美であり、真の帝王なら誉れの服や財宝を与えるものでなので、料理人の血筋と考えた」と答えた。帝王は自分の生まれを恥じ、帝王位を人の系譜学者に譲り退位し、修道僧となって、放浪の旅に出た。新しい帝王となった人の系譜学者は、宝石の系譜学者を右の守護、馬の系譜学者を左の守護とし、総理大臣は留任させ、新しい治世を始めた。 修道僧となった帝王は放浪の旅でカイロに着き、王宮を眺めていると、帝王マハムードが通りかかり、高貴な雰囲気を持った修道僧を不思議に思い、王宮に招き事情を聞いた。修道僧が話をすると、帝王マハムードは大いに感心し、今度は自分がいかにして帝王になったかの話「若者の猿の物語」をし、身分の低い生まれを気にすべきではないと言って、帝王であった修道僧を総理大臣にした。新しい総理大臣は政務を公平に行い、人々から名宰相と言われた。 あるとき、帝王マハムードが憂鬱な気分に襲われたため、帝王と総理大臣は精神病院を見学に行った。そこには3人しかいなかったが、それぞれ「第一の狂人の物語」「第二の狂人の物語」「第三の狂人の物語」を語った。帝王は3人を精神病院から解放し、それぞれの恋人と結婚させ、侍従に任命し、一同幸せに暮らした。
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