若者の猿の物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:08 UTC 版)
「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「若者の猿の物語」の解説
昔、カイロに貧しい水撒人夫がいて、大きな山羊の皮袋を担いで水を撒き歩くことを生業としていたが、マハムードという名の若い息子を残して死んでしまった。マハムードは収入を得る道がなく、修道僧となり、寺院に寝泊りし、物乞いをして暮らしていた。 ある日、マハムードは、気前の良い貴族から銀貨5ドラクムをもらった。それを持って歩いていると、市場で猿回しをしている男を見つけ、猿を買えば、芸をさせることで安定した銭を稼げると思い、猿回しから猿を5ドラクムで買った。猿がいては寺院に入れないので、廃屋で夜を過ごそうと廃屋に入ると、猿は美しい若者となり、金貨を取り出して食事を買ってくるように言い、2人は豪華な料理を食べ、廃屋で眠った。 翌朝、猿の若者は再び金貨を取り出し、マハムードに浴場に行き体を清め、美しい衣裳を買って戻って来るよう言った。戻って来ると、今度は贈り物の入った箱を渡され、それを持って帝王(スルタン)のところへ行き、帝王の長女との結婚を申し込むよう言われた。言われた通りにして帝王に贈り物を献上すると、それは美しい宝石の装身具の数々であった。長女との結婚を申し込むと、帝王は大粒のダイヤモンドを示し、それと同じ大きさのダイヤモンドを婚資として差し出すように言った。マハムードが猿の若者に相談すると、同じ大きさの大粒のダイヤモンド10個を出してマハムードに与えたが、条件として猿の若者の許しがあるまで王女の中に分け入らないよう言った。マハムードが帝王に大粒のダイヤモンド10個を婚資として渡すと結婚が決まり、法官を呼び手続きが行われ、宴があり、初夜となったが、マハムードは王女の処女を奪わなかった。猿の若者は、マハムードに王女のお守りの腕輪をもらってくるように言い、マハムードが王女からお守りの腕輪をもらい、猿の若者に渡すと、マハムードは貧しい服を着て、あの廃屋で目を覚ました。 マハムードが廃屋を出て、市場に行くとバルバル地方のマグリブ人の占い師がいたので、占ってもらうと、これは魔神(ジン)の仕業であると言い、読めない文字で手紙を書き、マハムードにそれをある所まで持って行き、主人に渡すように言った。マハムードが言われた所まで行くと、無数の火が現れたが、それを持つ者は見えなかった。中心の大きな火の前に行き、手紙を渡すと、「アトラシュよ、不信のジンを捕まえて来い」との声がし、すぐに猿の若者が捕まえられて来た。声が「王女の腕輪を返せ」と言うと、猿の若者は断り、腕輪を飲み込んだので、猿の若者は殺され、体を裂いて腕輪が取り出された。腕輪がマハムードに返されると、マハムードは豪華な服を着て、宮殿の部屋にいて、王女から腕輪をもらった時に戻っていた。 その後しばらくして、帝王は男子を残さずなくなられたので、長女の夫であるマハムードが帝王となったのであった。
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