正確さの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/25 13:45 UTC 版)
ただし、法的な文書に書かれた死因が医学的、統計学的に見ても正しいかどうかは別問題である。 Preventing Chronic Diseaseで発表された研究において、ニューヨークの研修医で、資料の現在のシステムが正確であると考えていると割合はわずか3分の1である、ということが報告された。半数が「自分が本当の死因であると感じたことを書類に記録できない」と指摘しており、技術的な限界だけでなく、「他の死因にしろ」という指示がある、といった理由を挙げている。約5分の4が「恐らく」「と推定される」「原因不明」との決定が下されうることを知らず、臨床検査の結果や他の新しい情報が矛盾した時に死亡診断書を更新したという人は3%未満であり、心血管疾患は「不正確に報告される最も頻度の高い診断」と示された。 死因に関して不確実性もしくは曖昧さがあるとき、親類や関係者などにより疑義を提起されることがある。医師が関わっていたにもかかわらず死亡した場合は、医師が適切な判断や治療をしたのかという問題ともかかわり、死因を巡って医療裁判に持ち込まれることがある。ヨーロッパではキリスト教が圧倒的な多数派であった時代が長く、キリスト教では自殺は特に忌避され、その結果、教会で葬儀すらもあげてもらえないなどタブー視され差別的に扱われた時代が長いので、その影響で現在でも欧米では本当は自殺で亡くなった人でも、「事故死」や「心不全」などと書いてくれと家族・親族から要請が入りがちで、その結果医師にも書類に「自殺」と書きづらくなるようなバイアスがかかりがちである。また特に紛争国の政治家や権力闘争の渦中にある人物やビジネス上の要人などについては公式の発表(表向きの発表)とは別に、人々の間で暗殺説などが囁かれることもある。専制国家や権威主義の国家では、権力者は、政権維持に不都合な人々をターゲットとして、手下を使ってしばしば暗殺を行うので、政府側が政府系のメディアで発表する「公式の死因」と遺族側が指摘する「本当の死因」とが食い違うことがしばしば起きる。また、有名人の死に関してはしばしば本当の死因は伏せられることがあるので人々の間で極端な憶測を生んでしまうことがある。
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