欧州言語の翻訳版
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 01:57 UTC 版)
英語・およびフランス語に翻訳・出版したものでは、以下が著名である。なお、ヘンリー・リーヴ(英語版)は、1886年に『エディンバラ・レヴュー(英語版)』誌で「ガランは子ども部屋に、レインは図書館に、ペインは書斎に、そしてバートンはドブに」と特徴づけている。 ガラン版(フランス語) フランス語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。千夜一夜物語ガラン版 1704年から1717年にかけてアントワーヌ・ガラン(1646年-1715年)の翻訳によりフランス語で出版された。全12巻。第8巻以降は、第1巻から第7巻までの翻訳に使用したアラビア語の写本とは異なる写本で翻訳された。このガランの翻訳で初めてヨーロッパに「千一夜」(フランス語: Les Mille et Une Nuits)が紹介され、大きな反響を呼んだ。 レイン版(英語) 1838年から1840年にかけてエドワード・ウィリアム・レイン(英語版) (1801年-1876年)の翻訳により英語で出版された。家庭向け、児童向けとしての配慮から省略、改定された部分がある。ブーラーク版を元に翻訳されている。同時代のエジプトを知るための社会資料として「千一夜」を見ており、200枚を超える挿絵、膨大な注釈を附した。 ペイン版(英語) 1882年から1884年にかけてジョン・ペイン(1842年–1916年)の翻訳により英語で出版された。全12巻。カルカッタ第二版を元に翻訳されている。 バートン版(英語) 英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。千夜一夜物語バートン版 1885年から1888年にかけてリチャード・バートンにより英語に翻訳され出版された。本編10巻と補遺6巻から成る。本編10巻は「カルカッタ第二版」を底本としているが、「ブレスラウ版」(アラビア語、欧州で印刷された唯一の原典版、チュニスから出た写本に基くとしている)「カルカッタ第一版」「ブーラーク版」や他の英訳本等で補足されており、バートンによる脚色を含んでいる。「カルカッタ第二版」に含まれない物語(「アラジン」など)は補遺6巻に収録されている。バートン版は、特に性風俗に関して充実している詳細な訳注に特徴がある。また、他のどの版よりも収録物語数が多く、「もっとも完備している」と言われる。 マルドリュス版(フランス語) 1899年から1904年にかけてジョゼフ=シャルル・マルドリュスにより仏訳され出版された。全16巻。「完訳」「逐語訳」を謳うが、そもそも特定の本を訳したものではなく、既存の版をベースにマルドリュスが独自に編纂し大幅に加筆したもの。バートン版とは方向性が異なるものの官能性を強調している傾向が強い。マラルメやジッドなどのフランスの文学者から高い評価を受けた。子供向けにリライトされたガラン版を除けば、バートン版と共に世界で最も読まれている千夜一夜物語。 マフディー版(フサイン・ハッダウィー(Husain Haddawy)による英語訳) ムフシン・マフディーがパリの国立図書館にあったアラビア語写本(アントワーヌ・ガランが自分の翻訳に使用したもの、MSS Arabe 3609,3610,3611,以下)をもとに、1984年にアラビアンナイトの校訂版を出版した。これをフサイン・ハッダウィーが1990年に、非常に読みやすい英語に翻訳した。35編の物語と1つの物語の半分、つまり271夜分が収録されている。ロバート・アーウィン(英語版)は、「ハッダウィーによる訳は正確な上に読んでいて楽しい。さらにハッダウィー訳の底本となったマフディー版原典には巧みに語られた部分がたくさんあるのだが、これらはカルカッタ第二版やブーラーク版では失われている。アラビアン・ナイト物語の本当の味わいを得たい者には、ハッダウィーの訳を強く推薦する。」と評価している。 マフディー版またはそのハッダウィー英訳版の日本語訳は未刊であるが、2014年時点で西尾哲夫が翻訳中とされている。しかし現実には、西尾はガランによるフランス語版を日本語訳しており(後述)、マフディー版またはそのハッダウィー英訳版の翻訳はしておらず、未だに未刊である。 なお、ハッダウィーはガラン写本に含まれていない、「orphan tales」=いわゆる「孤児の話」の英語訳を1995年に出版している。こちらの日本語訳も未刊である。
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