暗殺の目撃者として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 15:39 UTC 版)
「エイブラハム・ザプルーダー」の記事における「暗殺の目撃者として」の解説
ザプルーダーが所持していたカメラは、ベル&ハウエル社製414 PD式8mmカメラで、暗殺を撮影した時には中にコダック社製の安全フィルム、Kodachrome II 8 が入っていた。ザプルーダーは大統領の車列を、エルム通り (暗殺発生現場) に面したコンクリート製のパーゴラ (the Bryan Pergola) の一番西側の端の上に立って撮影していた。姿勢を安定させるため、会社の受付係の女性が背後からザプルーダーを支えていた。この時撮影された歴史的フィルムが、いわゆる『ザプルーダー・フィルム』で、全体で486コマ、映写速度にして約26.6秒の記録である。 ザプルーダーは事務所に帰る途中で、地元紙「ダラス・モーニング・ニュース」の記者に会う。2人はザプルーダーが撮影したフィルムについて話し合い、後にザプルーダーの事務所で再び会うことを約束する。記者はその後すぐ、彼の知人であるシークレット・サービスダラス事務所の職員に会い、記者は彼にザプルーダーのフィルムのことを伝える。2人はその後1時間以内に、一緒にザプルーダーの事務所を訪ねた。ザプルーダーは自分が撮影したフィルムの重要性を認識してフィルムを売ることを考えていたが、つい先ほど目撃した光景によりショックを受けていた彼は、シークレット・サービスの職員に暗殺事件の捜査にのみ使用するという条件でフィルムを手渡すことに同意する。彼らはフィルムを地元のテレビ局「WFAA」に持ち込み現像を試みた。作業の間、ザプルーダーはWFAA の番組に生出演して目撃した暗殺の様子や、自分が撮影したフィルムについて語り、ケネディが頭部のどの辺りに銃撃を受けたかも話している。暗殺発生から2時間も経っていない頃である。 司 会 者: [...] それで、あなたの見たことをお話くださいませんか?ザプルーダー: 私は、えー、30分位前に事務所を出て、フィルムを撮影するのによい場所を探していたのです。そしてよい場所を見つけました。広場の近く、鉄道の陸橋の近くのコンクリートのブロックです。そこに私は立って、そこには私の事務所から女の子も来ていました、彼女は私のすぐ後にいました。それから私が撮影していると、大統領がヒューストン通りから曲がってやって来ました。途中まで来た時に、銃声が聴こえました。そして大統領は脇に倒れました、こんな風にです。それからまた銃声が聴こえました。1発だったか2発だったかは分かりません。そして大統領の頭がほとんど開いたようになって[ザプルーダーが頭の右側、右耳の上に右手の指を置き円錐形を作る]、血やいろんなものが見えましたが、私は撮影を続けました。それが全てです。私は気分が悪いです。私はとても…司 会 者: まさに今、全世界がそのように感じていると思いますよ。ザプルーダー: 恐ろしい、恐ろしい。司 会 者: あなたはカメラの中のフィルムを持っていらっしゃいますね。それを私たちは...ザプルーダー: はい、スタジオに持って来ました、今ね。 司 会 者: それを私たちは、なるべく速く現像しようと試みているところです。 しかし、WFAA は8mmフィルムを現像できなかったため、フィルムはダラスのコダック社の現像所に持ち込まれ、直ちに現像されることになった。コダック社の現像所には8mmフィルムをコピーする設備がなかったため、フィルムは他の現像所がコピーを3本作った後、現像のためコダック社に戻された。ザプルーダーはオリジナルとコピー1本を保有し、他の2本のコピーをシークレット・サービスの職員に渡した。彼はそれらをすぐにワシントンの本部へ送った。 その晩11:00、ザプルーダーは自宅で、『ライフ』誌の編集者から電話を受けた。翌朝、編集者は飛行機でダラスに向かい、ザプルーダーと面談、フィルムの出版権の購入について話し合いを持つことになった。 その夜ザプルーダーは悪夢を見たと言われている。彼がニューヨークのタイムズスクエアの前を歩いていると、売店に「大統領の頭が爆発するのを見よう!」という広告があるという夢である。この夢を見てザプルーダーは、フィルムで金を儲けても、世間に自分が見たような恐怖をそのまま見せるようなことはしない、と決意した。1963年11月25日、ザプルーダーは『ライフ』誌にオリジナルのフィルムと、それに係る全ての権利を150,000ドルで売却した。売却代金は6年間の分割払いでザプルーダーに支払われたが、最初の1年分の支払い25,000ドルをザプルーダーは、オズワルドに殺害されたダラス市警の警官J・D・ティピットの未亡人と子供たちに寄付した。『ライフ』誌との取引には、フィルムの313コマ目は公開しないという条件が付けられていた。フィルムの313コマ目には、大統領が頭部に致命的な銃弾を受けた瞬間が写っている。
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