日米交渉全般について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:58 UTC 版)
対日経済制裁の評価については「ABCD包囲網#歴史学者からの評価」を参照 ジョナサン・G ・アトリー 「両国とも戦争は望んではいなかった。日本の指導者たちはアメリカの莫大な経済軍事資源に一目を置いており、そうした大国と戦うことはまったく思慮を欠くものと考えていた。他方、アメリカの指導者たちに日本人に対する尊敬の念があったわけではない。ただアメリカの現実的利益がヨーロッパに存在すると考えていたために、アジアでの戦争を極力避けたかったのである。双方が平和を希求していたからこそ、外交の機会がありえたのである」「そもそも外交の目的とは、利害対立を有する国家が戦場においてでなく相互の差異を解消する方法を見出すことにある。…こうした基準からすると、アメリカの外交政策担当者は失敗したことになる。四年以上の期間を通して、彼らはアメリカの政策、日本の政策、いずれも戦争を回避する方向に導くことができなかったのである」。 P.カルヴォコレッシー、G.ウイント、J・プリチャード 「どちらかというと日本人と同じく、力ずくでなければ日本人には通じないと思いこんだ米国は、交渉への取り組みが異常なほどかたくなで、日本が納得しうる妥協を切望しているのを判断し損なった」「米国政府が中国の陳情とチャーチルの発言通りにするや、真の暫定協定の可能性も消えうせてしまった。日本は、壁に背を向けて、これ以上の話し合いは全く無益であると悟った」「とりわけ強調すべきなのは、米国が加えた対日経済制裁と、適度の強さ、柔軟性、想像力で外交交渉を行うのに米国が失敗したため必然的に生じた結果が、日本としてみじめな降伏に屈しないためには、太平洋戦争しか代案がなかったということだ。問題の核心は、あの戦争を避けられたかもしれない対日政策をとるのは、米国と英国の権力者の手中にあったのである」 。 ジョージ・ケナン 「もしハルが、東アジアの政治的現実にもっと関心を示し、さらに他国民もすぐれて法律的かつ道徳的な原理にたいし口先だけでも好意をしめすべきだということにハル自身があまり執着しなかったら、太平洋戦争はたぶん避けえたろうと思われる」「しかしながら、アメリカ国民はこの事実を当時も理解しなかったし、現在にいたるまで理解していない。自分たちは攻撃され挑発された、したがって防御しなければならない、だからこの戦争の目的は自分たちを攻撃した勢力を打倒することにある。こういう単純な印象のもとにアメリカ国民は太平洋戦争に乗りこんでいったのである。それで彼らは本当のところ、自分たちが何のために戦っているかについて、第一次大戦や第二次大戦のヨーロッパ戦線の戦争目的以上に明確な目的を持ちえなかったのである」。 須藤眞志 「日本側は松岡を除いて、確固たる対米観が存在しておらず、十分に説明すれば、日本の立場を理解してくれるはずという楽観的見方が支配的で、(日本に対して)悪しきイメージをアメリカ当局者達が抱いているとは想像もしていなかった。一方、アメリカ側は、日本は説明してもわからない国であり、制裁という態度で示すのが最も効果のある説得方法であると確信していた。それは日本に対する不信感に裏打ちされていた」として、松岡の強硬論も誤算であったこと、近衛の楽観論は結局裏切られたこと、そして、ホーンベックの力による封じ込めで日本は屈服するという合理主義も、日本には弱い者でも時には強い者に立ち向かうという非合理主義があり通用しなかったことを挙げ、「結局のところ、(日米)相互に誤ったイメージの上に作られた政策の行き違いが悲劇を生む結果」となったと指摘している。
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