日本政府による対策
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第3次小泉内閣当時の2006年(平成18年)6月20日の第7回犯罪対策閣僚会議・第3回青少年育成推進本部合同会議において、社会から暴力団を確実に排除するため、犯罪対策閣僚会議に関係省庁から成るワーキングチームを設置して対策を検討することが決定された。この方針を受け7月21日、内閣官房内閣審議官を議長とし、関係省庁の課長級職員を構成員とする「暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチーム」が設置された。同ワーキングチームによる検討を経て、第1次安倍政権下の2007年(平成19年)6月19日、政府の犯罪対策閣僚会議の申し合わせとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が策定された。反社会的勢力の用語が公的に用いられた最初の例である。この指針においては反社会的勢力を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と註釈している。指針では、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応等が取りまとめられた他、相手が反社会的勢力にあたるかどうかをとらえる際には、相手がどのような属性を持った相手であるか(属性要件)、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求等の行為を行っているかどうか(行為要件)への着目が重要であるとし、2004年10月25日付け警察庁次長通達「組織犯罪対策要綱」を参照するよう示した。また、この指針は、多くの企業が契約・約款の中に後述する「反社会的勢力排除条項」を盛り込む契機ともなった。 この指針に伴う金融庁の募集したパブリックコメントにおいて、全国銀行協会等から「反社会的勢力との関係遮断の実効性確保のためには、反社会的勢力に関して具体的な定義等を策定する必要がある」との意見が出されたが、「反社会的勢力はその形態が多様であり、社会情勢等に応じて変化し得ることから、あらかじめ限定的に定義することは性質上そぐわないと考えます。本項の「反社会的勢力のとらえ方」を参考に、各金融機関で実態を踏まえて判断する必要があると考えます。」との考え方が示された。 また、2014年のパブリックコメントにおいても、「反社会的勢力はその形態が多様であり、社会情勢等に応じて変化し得るため、あらかじめ限定的に基準を設けることはその性質上妥当でないと考えます。本ガイドラインを参考に、各事業者において実態を踏まえて判断する必要があります。」という金融庁の考え方が示されている。 2019年(令和元年)、安倍内閣は安倍首相が主催する「桜を見る会」に、反社会的勢力とされる人物が参加していた疑惑に関連して同年11月29日に立憲民主党の初鹿明博から提出された質問主意書において、「この指針において、「反社会的勢力」とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義し」たことについて「異なる定義があるとすると対応方針を変更する必要が生じかねません。政府として、改めて「反社会的勢力」とは何かを定義付ける必要があると考えますが、いかがでしょうか。」と問われたことに対し、同年12月10日、「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難だ」と答弁した。 同年12月16日の官房長官記者会見において、北海道新聞の記者が「「反社会的勢力と判断して取引を停止した場合、相手に『定義を示せ』と言われ、訴訟や慰謝料を求められかねない」と、今回の閣議決定に対する不安」と報道したことを挙げ、「現場の混乱もあるように思うのですがいかがでしょう」と質問したことに対し、菅官房長官は「指針は全く変わっていません。」と答えている。 なお、この指針に法的拘束力はないが、全国暴力追放運動推進センターらが実施した2018年のアンケート調査によると、指針に沿って対策を実施しているとする企業は1598社中668社(41.8%)である。
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