日本刀の性能と力学的性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 09:56 UTC 版)
日本刀は「折れず、曲がらず、よく切れる」といった3つの相反する性質を同時に達成することを追求しながら作刀工程が発達してきたと考えられている。「折れず、曲がらず」は材料工学においての強度と靭性の両立に相当する。両者の均衡を保つことは高度な技術の結果である。また「よく切れる」と「折れず」の両立も難しい。これについては刃先は硬く、芯に向かうと硬さが徐々に下がるいわゆる傾斜機能構造を持つことで圧縮残留応力を刃先に発生させて実現されている。 日本刀の切れ味については、様々なところで語られる。有名な逸話として、榊原鍵吉の同田貫一門の刀による「天覧兜割り」がある。ただし、この切れ味も最適な角度で切り込んでこそ発揮できるもので、静止物に刀を振り下ろす場合はともかく、実戦で動き回る相手に対し常に最適の角度で切り込むのは至難の業とされる。 日本刀のうち、江戸時代の打刀は、江戸幕府の規制(2尺9寸以上の刀すなわち野太刀は禁止された)と、外出中は本差と脇差をセットにした大小を日常的に帯刀することから、(江戸幕府の)創成期と幕末期を除き、刃渡り2尺3寸(約70cm)程度が定寸である。また、江戸時代には実戦に供する機会がなくなり、試し斬りが多々行われた。刀剣は一般通念よりも軽く作られている。 以下は各地域発祥の刀剣との比較。なお、重量は全て抜き身の状態のもの。 打刀(日本):刃渡り70-80cmの場合 850-1400g程度(柄、鍔などを含める、抜き身の状態。刃渡り100cm程のものは、2,000g前後) サーベル(世界各地):刃渡り70-100cmの場合 800g-1500g程度(地域によって異なり、この値より上下する場合もある) シャスク(東ヨーロッパ):刃渡り80cm 900-1,100g程度 バックソード(西ヨーロッパ) :刃渡り90cm以下、1200g-1300g(籠状の鍔も含む) ロングソード(西ヨーロッパ) :刃渡り90-110cm(全長は100-130cm) 1300-1500g 中国剣(中国):刃渡り70-100cmの場合 900-1,000g程度 (両手用、刃渡り100cmほどのものは3,000g程度以上) 以上は近代まで使われていた物である。日本の刀は、他の刀剣と比べ柄が長く、刃の単位長さ当たりの密度が低いわけではないが、両手で扱う刀剣の中では最も軽量な部類に入る。なお、日本刀は「断ち切る」ことに適した刀剣であり、一般的には切断の際に手前に引く必要性があるといわれているが誤りである ともいわれる。また切断の際の肘を伸ばしそのまま手前に下ろすという一連の動作を行えば自然に引き切りになるため、無理に引いて斬る必要性は薄いと言う意見もある。
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