既存の軍組織との関係について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 02:28 UTC 版)
「アメリカサイバー軍」の記事における「既存の軍組織との関係について」の解説
サイバー軍の活動については、陸軍・海軍・空軍の三軍など既存の軍組織との関係について、特に軍内部の指揮官たちから疑問や懸念を示す声もある。 アメリカ陸軍士官学校の教官で、同校のサイバーセキュリティ研究センターのセンター長も務めるグレゴリー・コンティ陸軍中佐(Lieutenant Colonel Gregory Conti)と、陸軍ネットワーク戦大隊(Army Network Warfare Battalion)の初代司令官を務め(2008年7月 - 2010年7月)、2010年7月からはサイバー軍司令官直属活動グループ(US Cyber Command Commander's Action Group)のメンバーを務めるジェン・イースタリー陸軍中佐(Lieutenant Colonel Jen Easterly)の2人は、軍事雑誌『スモール・ウォー・ジャーナル』(Small Wars Journal)に寄稿した共同論文『不遇な環境下にありながらのサイバー戦担当兵士の採用・育成・保持』(“Recruiting, Development, and Retention of Cyber Warriors Despite an Inhospitable Culture”)の中で、陸軍・海軍・空軍の既存の三軍の文化は、基本的にサイバー戦争の文化とは互換性がないと主張し、軍の4番目の部門としてサイバー戦争部門の新設を提案した。 また、前述のコンティ中佐は陸軍研究・開発・技術コマンド(United States Army Research, Development and Engineering Command)の参謀長を務めるジョン・“バック”・スルドゥ陸軍大佐(Colonel John "Buck" Surdu)とも共同で、国防総省の情報分析機関の1つである「情報保証技術・分析センター」(Information Assurance Technology Analysis Center)が発行するニュース・レター『IANewsletter』に同様の趣旨の特集記事を寄稿している。コンティ中佐とスルドゥ大佐はその中で、「陸・海・空の主要三軍は動的な戦争に適するように設置され、彼らは射撃技術や肉体的な強さ、飛行能力、敵の砲火の中における部隊統率力などの技能に価値を置いている。」と述べたうえで、「不運なことに、これらの技能はサイバー戦争では意味をなさない。」と述べている。また彼らは、軍の制服にサイバー戦争に関する技術的な専門知識を讃える勲章もバッジもないことを例に挙げ、既存の三軍の中ではサイバー戦争に関する技術的専門知識に高い価値が置かれていないと指摘。「結論として、サイバー空間で戦闘を行い、勝利するという任務は軍事組織を必要とする軍事的任務の1つであって、その軍事組織は、高度な技能を持ったサイバー戦争(専門の)兵士を募集し、訓練し、維持することが可能な組織でなければならない。」とサイバー戦争専門の軍事組織の必要性を述べている。 その上で、コンティとスルドゥは結論として「有能かつ有効なサイバー部門を、陸軍・海軍・空軍という既存の三軍と並び立つ形で新設することは、合衆国に我々の技術的インフラを防御する能力と攻撃的作戦を遂行する能力を与えてくれるだろう。おそらく今後より重要になるであろうこの能力の存在は、合衆国の敵に対する強力な抑止力として働くだろう。」と述べている。 サイバー攻撃に応じるための軍の権利に関する懸念に対応して、Alexander大将はアメリカ合衆国議会の前での彼の認証聴聞会に先立ち、「合衆国はサイバー攻撃に対して迅速かつ強力に応酬しなければならない。また脅威に対抗または無能力化をすべきである。それは攻撃者の正体が不明である場合ですらすべきである」と述べた。これは、サウジアラビアでの政府運営の過激派ハニーポットを破壊する2008年の作戦のような出来事に応じたものであった。 「この新たなU.S.サイバー軍は、軍事資産保護と個人のプライバシー保護の間の均衡を計算する必要がある。」国防総省の報道でAlexanderは述べた。もし承認されるなら、Alexanderは、彼の主眼はネットワークを保全する能力と機能の構築と、部隊の目的を公に啓発することである、と言った。 「この部隊はサイバー空間を軍事化するための試みに関するものではない」と彼は言った。「むしろ、それは我々の軍事資産の保護に関するものである。」
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