文体と作品傾向
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デビューがSF誌『奇想天外』だったこともあり、しばらくはSFを中心に執筆していたが、1980年には高校生向け雑誌『高一コース』誌上で『星へ行く船』を連載した。また集英社文庫コバルトシリーズ(コバルト文庫)から『いつか猫になる日まで』を上梓するなど、活動の場をジュニア小説へも広げた。 同時代の口語表現を積極的に取り入れ、一段落を「が。」の2文字で終わらせて改行するなど規範を大きく逸脱した文体を高橋源一郎は『ラカンのぬいぐるみ』で「新口語文」と評価した。当時の口語表現を文体に反映した端的な例として、一人称「あたし」、二人称「おたく」という砕けた人称代名詞を多用したことなどが挙げられる。 デビュー直後の『毎日新聞』インタビューで「マンガ『ルパン三世』の活字版を書きたかったんです」と述べたことから、当初その文体は漫画やアニメとの関係で論じられることが多かったが、この発言自体は記事を書いた記者の曲解によって発生したもので、本人の発言意図と乖離したものであることが判明している。その後の本人の発言では、アニメや漫画の影響下で出来上がった文体でないことが語られている。本人によれば、影響を受けたのは小林信彦の、女の子の主人公の一人称口語文体の小説『オヨヨ島の冒険』であり、自分の文体を作ろうと思い立った中学1年生の時、『オヨヨシリーズ』を読んで感じた「会話の妙」と「間」を手本としている。 新しい世代の言語感覚による「文章で書いた漫画」であると指摘されており[要出典]、後の作家に対する影響力は無視できない。新井素子の文体は後のライトノベル文体に少なからず影響を与え、元祖的もしくは雛形的存在と称されることもある。 作品傾向としては、20代前半までは同年代の女性を主人公とするSF小説が主だった。25歳で結婚した後は、自らの結婚体験を元にした『結婚物語』などのコメディや、『おしまいの日』などのサイコホラー小説のような新たなジャンルにも挑戦した。また、自身の不妊体験を下敷きにしたかのような「産むということ」や「不妊ということ」「女性というもの」について独特の視点に基づいた小説を発表するなど、執筆活動の幅を拡げていった。そして、それらの文体はジャンルや読者層に合わせ、デビュー当時のものとは大きく変えている。 身近に起こった出来事を明るく軽妙に綴るエッセイでも知られる。
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