封印
『雨月物語』巻之4「蛇性の婬」 蛇の化身である女・真名子(まなご)が、美青年・豊雄に執着し、彼の新妻・富子に憑依する。道成寺の法海和尚の教えで、豊雄が富子の身体を袈裟で押しふせると、富子の身体の上に、3尺ほどの白蛇(=真名子の正体)があらわれる。法海和尚は白蛇を鉄鉢に入れ、袈裟で封じて、道成寺の御堂前に地中深く埋め、永劫の間、世に出ることを禁じた。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章 ヘラクレスは、エウリュステウスに命ぜられた10の仕事の第2番目として、レルネの沼沢地に住む9頭のヒュドラ(水蛇)を退治した。ヒュドラは9頭を有し、8つは殺すことができるが、1つは不死だったので、ヘラクレスは不死の頭を切り離し、地中に埋め、重い石をその上に置いた。
『水滸伝』百二十回本第1回 宋の仁宗皇帝の代。疫病退散祈願のため、勅使・洪大尉が竜虎山(=道教の大本山)の上清宮を訪れた。「伏魔之殿」と記された社殿があり、そこは、かつて大唐の洞玄国師が、百八の魔王を地中に封じこめた所だった。洪大尉が封印を取り除くと、深い穴の底から黒雲が噴き上がり、金色の光となって八方へ散った。解放された百八の魔王は、百八人の豪傑に生まれ変わった。
『夜叉ケ池』(泉鏡花) 昔、人と水と戦って、里が滅びようとした時、越の大徳泰澄が行力をもって龍神を夜叉ケ池へ封じ込め、龍神は池の底にとどまることを約束した。しかし龍神は自由気ままを望み、ともすれば誓いを忘れて天地を馳せようとする。そのため、明け六つ・暮れ六つ・丑満と、一昼夜に3度、鐘を撞き鳴らして、龍神に約束を思い出させねばならない→〔鐘〕3b。
『ヨハネの黙示録』第20章 世界の終末の時、神と悪魔の決戦に神が勝利する。悪魔である龍を、天使が鎖で縛り、底なしの淵に投げ入れ、鍵をかけて、その上に封印を施す。千年後に龍は解放されるが、再び神に挑み、敗れて、火と硫黄の池に投げ込まれる。
★1d.宇宙の「禍つ事(まがつごと)」を、星団の中に封じ込める。
『結晶星団』(小松左京) 宇宙の中心部に、14個の恒星が巨大な水晶柱型に配置された星団があった。それは造物主が、宇宙の進化にとって望ましからざる「禍つ事」を封印した「神の檻」だった。閉じ込められたものたちは、「造物主は正義か?」「この宇宙は正義か?」と問い、「われわれにも存在を続ける権利がある」と主張した。彼らは、現宇宙に混沌を生ぜしめ、新たな可能性を拓くべく、結晶星団を破壊して飛び出て行った。
『黄金の壺』(ホフマン) 大学生アンゼルムスは、火の精リントホルストの依頼で書類の筆写をするが、火の精への疑念から、つい書類にインクのしみをつけてしまう。そのため彼の身体は縮まり、ガラス瓶の中に閉じこめられる。
『江談抄』第3-1 入唐して楼上に幽閉された吉備大臣は、賽に双六筒をかぶせて唐土の日月を封じこめた。2日も3日も月日が現れぬので唐の人々は恐れ、吉備大臣を解放した。
*→〔壺〕3の『千一夜物語』「漁師と鬼神との物語」マルドリュス版第3~6夜。
*→〔瓶(びん)〕1。
★3.封印を解く。
『ヨハネの黙示録』第5~16章 天上の玉座に座す神の右手に巻物があり、7つの封印で封じられている。キリストの化身である小羊が次々に封印を解いていくと、内乱・戦争・飢饉・疫病を象徴する4騎士が現れる。太陽は暗く、月は血の色になり、空の星は落ち、地上に大災害が起こって、世界の終末の時が来る→〔地震〕1・〔七人・七匹〕3。
★4.効力のない封印。
『南総里見八犬伝』第9輯巻之10第110回~巻之11第113回 娘浜路姫の病気を治すために、里見義成は犬江親兵衛の「仁」の霊玉を借りて香箱に納め、それを壺に入れて封印し、さらに瓶に納めて病床下の土中に埋める。浜路姫の回復後、義成が瓶を掘り出すと、壺の封印はそのままだが、香箱の中の玉は消えている。玉は親兵衛のもとへ飛び戻っていたのだった。
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