委員会に対する批評
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 15:41 UTC 版)
「第43回世界遺産委員会」の記事における「委員会に対する批評」の解説
日程の長期化により委員会開催にかかる運営費用の増大が問題となっているが(第42回世界遺産委員会#委員会への批判参照)、産油国であるアゼルバイジャンは潤沢なオイルマネーにより新築で設備が充実した施設が多く、多くの国際会議を誘致している実績があり、途上国では提供できない快適な状況を提供しており、今後の開催希望都市へのプレッシャーを与えかねない。 アゼルバイジャンはイスラム教国ながら世俗主義で、キリスト教社会との接点も多いことから西洋世界の評判も良く、異文化間対話を積極的に行うバクープロセス(英語版)はユネスコも高く評価している。一方で事実上の一党独裁制で専制的な側面もあり、強気な姿勢の表れなのか、自国の推薦物件である「シャキの歴史地区とハーンの宮殿」の登録審査では、事前勧告では不登録だったものを、Abulfas Garayev議長が議事進行役を離れ文化大臣の肩書で委員国の委員として列席するという前代未聞の状態でシャキの歴史地区とハーンの宮殿の素晴らしさを力説して登録に持ち込んだ。シャキの歴史地区とハーンの宮殿が登録された7月7日夜、アゼルバイジャン大統領宮殿(英語版)において大統領主催の登録記念祝賀パーティーが予定通り開催された。この逆転登録とは対照的に、不登録勧告をうけた案件を取り下げた推薦国に「世界遺産条約の精神に則っている」と拍手を送る場面もあった。 他方、2019年1月1日付でユネスコを脱退したアメリカが「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」を推薦し登録となった。米国務省は「(ユネスコは脱退したが)世界遺産条約を破棄したわけではなく、世界遺産基金も納付しており推薦の権利はある」としたことで、今後模倣追従する国が現れないか危惧される。 ユネスコ関係者もさまざまなコメントを発したノートルダム大聖堂の火災後の再建に関して今回の委員会では議題にされないことが確定し、世界遺産の管理者として無責任との批判が噴出している。 今委員会において登録されたイタリアの「コネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコ栽培丘陵群」に関して、2007年に端を発した世界金融危機(世界同時不況)により高額なフランスのシャンパン離れから、安価で高品質なプロセッコ(スパークリングワイン)に注目が集まり大幅な売上増加となったことで(2015年の売り上げは前年比75%増)、急遽増産植栽を行ったため土地が痩せ2016年には収穫量が50%も落ちたばかりか、大雨で土壌流出が発生し世界遺産として評価された景観を形成するシグリオニも崩壊した。こうしたことからユネスコと世界遺産委員会は登録審査に際して学術的価値の精査のみならず、経済活動が伴う稼働遺産ではその経済的現況や社会背景にも注意を払うべきとの意見が出されている。
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