大気と温度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 03:00 UTC 版)
詳細は「金星の大気」を参照 金星には二酸化炭素(CO2)を主成分とし、わずかに窒素を含む大気が存在する。気圧は非常に高く、地表で約92気圧(atm)ある(地球での水深920メートルに相当)。地表での気温は約730K(約460℃)に達する。高温となっている金星地表から雲層(高度45-70km)までの下層大気の温度勾配は、雲層の上端で有効温度になるような乾燥断熱温度勾配にほぼ従っており、高度50km付近では1気圧で約350K(75℃)、55km付近では0.5気圧で約300K(27℃)と、地球よりやや高い程度である。 金星の自転は非常にゆっくりなものである(#自転を参照)が、熱による対流と大気の熱慣性のため、昼でも夜でも地表の温度にそれほどの差はない。大気上層部の「スーパーローテーション」と呼ばれる4日で金星を一周する高速風が、金星全体へ熱を分散するのをさらに助けている。 高度45kmから70kmに硫酸(H2SO4)の雲が存在する。このH2SO4の粒は下層で分解して再び雲層に戻るため、地表に届くことはない。雲の最上部では350km/hもの速度で風が吹いているが、地表では時速数kmの風が吹く程度である。しかし金星の大気圧が非常に高いため、地表の構造物に対して強力に風化作用が働く。 2011年、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナス・エクスプレス」が大気の上層からオゾン層を発見した。2012年、ビーナス・エクスプレスの5年分のデータを解析した結果、上空125kmのところに、気温が-175℃の極低温の場所があることがわかった。この低温層は、2つの高温の層に挟まっており、夜の大気が優勢な部分が低温になっていると考えられている。この極低温から、二酸化炭素の氷が生じているとも考えられている。 2020年9月、カーディフ大学の研究者を中心とするイギリス・アメリカ・日本の研究者から成る研究チームがチリのアルマ望遠鏡とハワイのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を用いて行った観測から、金星での環境下における地質学的条件や化学的条件のもとでは発生しないと考えられていたホスフィン(リン化水素)が金星の大気上層から検出されたという研究結果をネイチャーアストロノミーにて発表した。ホスフィンの生成要因として、研究チームは太陽光からの光化学反応や火山活動によって供給された可能性も検討されたが、検出されたホスフィンの量はそれらの要因では説明できなかった。まだ人類が知りえない未知の化学プロセスによって生成されている可能性が高いとされているが、地球上ではホスフィンは一部の嫌気性微生物から生成される事が知られているため、金星大気に生命が存在している痕跡である可能性も示されている。アメリカ航空宇宙局(NASA)の長官ジム・ブライデンスタイン(英語版)はこれまでの地球外生命探査において「最大」の発見であるという見解を示している。ただしこのホスフィンの検出報告については、別の複数の研究者グループから疑義が呈されている。同じ観測データを異なるグループが独立して再解析したところホスフィンの特徴は統計的に有意な水準では検出されず、先の報告は誤検出の可能性が高いとの指摘がなされている。
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