大気とスペクトル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 00:25 UTC 版)
大部分の白色矮星は炭素と酸素からなっていると考えられているが、分光観測では白色矮星から放射される光は、水素やヘリウムが主体である大気から来ていることが示されている。大気に含まれる主要な元素は一般に、その他全ての微量な元素の少なくとも1000倍も多く含まれている。1940年代にエヴリー・シャツマンが説明した通り、白色矮星は表面重力が大きく、重い元素は沈降し軽い元素は上昇するという重力的な分離が大気内で発生するため、このような純度が引き起こされていると考えられている:§§5–6。我々が観測できる白色矮星の唯一の部分であるこの大気は、漸近巨星分枝の段階にある恒星の外層の残骸であり、星間物質から降着した物質も含んでいると考えられる。この外層は、天体の総質量の100分の1未満の質量を持つヘリウム豊富な層と、もし大気が水素豊富であった場合はさらにその上に横たわる天体の総質量のおよそ1万分の1の水素豊富な層からなるとされている:§§4–5。 外層は薄いものの、白色矮星の熱進化を決定づけている。白色矮星の大部分を占める縮退した電子は熱をよく伝導する。そのため白色矮星の質量のほとんどは等温で、また高温である。表面温度が 8,000 K から 16,000 K の白色矮星は、コアの温度はおよそ 5,000,000 K から 20,000,000 K であると考えられる。白色矮星は、放射を行う外層の不透明度によってのみ、非常に急速な冷却を起こすことを回避している。 白色矮星のスペクトル分類主要および二次的な特徴A 水素の線が存在する B ヘリウム線 C 連続スペクトルを示し、線なし O 電離ヘリウムの線に、中性ヘリウムか水素の線が付随 Z 金属線 Q 炭素の線が存在 X 不明瞭もしくは分類不能なスペクトル 二次的特徴のみP 検出可能な偏光を伴った磁場を持つ白色矮星 H 検出可能な偏光を伴わない磁場を持つ白色矮星 E 輝線が存在 V 変光 白色矮星のスペクトルを分類しようとする初めての試みは1941年のジェラルド・カイパーによって行われ、それ以降多数の分類法が提案され用いられている。現在用いられている分類体系は Edward M. Sion、Jesse L. Greenstein らによって1983年に導入されたものであり、これはその後何度か改定されている。この分類法では先頭の文字をDとし、スペクトルの主要な特徴を記述する文字、続いて任意でスペクトルの二次的な特徴を記述する文字を用いる (それぞれの特徴は表に記載)。さらにその後ろに、50,400 K を有効温度で割って計算される温度を示す指数を記すことで、白色矮星のスペクトルを記述する。以下はその一例である。 スペクトル中に中性ヘリウム (He I) の線のみが見られ、有効温度が 15,000 K である白色矮星の分類は、DB3 となる。あるいは温度測定の精度が保証される場合は、DB3.5 となる。 白色矮星が偏光を伴う磁場を持ち、有効温度が 17,000 K で、スペクトルが中性ヘリウムの線で占められ、加えて水素も見られる場合、分類は DBAP3 となる。 正しい分類が不明である場合は、"?" と ":" の記号も用いられる。 主要なスペクトル分類がDAである白色矮星は,水素が主体の大気を持つ。この種類の白色矮星は多数派であり、全ての観測されている白色矮星のおよそ80%を占める。これに次いで多いのがDBのスペクトル型を持つ白色矮星であり、およそ16%である。温度が 15,000 K を超える高温なDQ型の白色矮星 (全体のおよそ0.1%) は炭素主体の大気を持つ。スペクトル型がDB、DC、DO、DZ、および低温なDQであるものは、ヘリウム主体の大気を持つ。炭素と金属が存在しないと仮定すると、どのスペクトル分類が見られるかは天体の有効温度に依存する。有効温度がおよそ 100,000 K から 45,000 K の間の白色矮星は,スペクトルはDOに分類され、一階電離のヘリウム主体の大気を持つ。30,000 K から 12,000 K の間は、中性ヘリウムのスペクトル線を示すDBになる。12,000 K 未満の場合はスペクトルは特徴を欠いたものになり、DCに分類される:§2.4。 いくつかの白色矮星の大気のスペクトルからは、水素分子が検出されている。
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