報道局と制作局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 13:53 UTC 版)
制作局もワイドショーのような報道もあつかう情報番組を制作することが多い。NHKは報道局と制作局が独立して業務をおこない、職員採用も別におこなうなど縦割り構造が強い。 第二次世界大戦終結直後、NHKや民放には「社会部」という報道部門とはまったく独立したジャーナリスティクな機能を持つ部署が報道と対等以上の放送時間をもって存在していた。 NHKの社会部社会課は『街頭録音』・『尋ね人』・『社会の窓』、ラジオ東京(現TBS)の社会部は『ラジオスケッチ』・『伸びゆくこどもたち』、文化放送の社会教養部は『マイクの広場』・『日本のこども』といった番組を制作していた。 NHKを代表するドキュメンタリー制作者であった吉田直哉は報道に対抗できる幅広い分野を自分の企画で自由に取り上げるために、ドキュメンタリー番組を報道とは一線を画す組織で制作することにこだわった。 一方、制作局の制作手法が問題を起こすことも多い。 『発掘!あるある大事典』の捏造問題で外部調査委員を務めたノンフィクション作家の吉岡忍は、時には名誉毀損で訴えられることがあるので事実性には非常に執着する報道局とは違って、制作局には事実を軽く扱いがちな傾向があることが、制作局が制作する情報番組が捏造事件を起こしやすい原因だと指摘している。 取材手法にしても報道局は取材対象と「それは違うでしょう」などとコミュニケーションをするが、制作局は「そのひとことをいただきます」でおしまいでコミュニケーションがないという。制作でやっている手法は取材を受けてもらったら謝礼を出すというもので、インタビューを受ける側も謝礼を貰えると期待してやっているので、やり取り自体がすでにビジネスで、いわゆる報道局の取材とは違うという。 制作局取材の典型的な悪い例として、少年事件があると中学生にお金をくばったり卒業名簿をもらったりすることがあるが、そういうことを生々しい取材現場でやったら大問題になることを報道局出身者は知っているという。 しかし、大人の世界ではしゃべる側はお金をもらい、聞く側はお金を渡すという関係が一種のビジネスとして成立しているわけで、そういうのが当たり前になっている番組の作り方自体いいのかと吉岡は疑問を呈している。 現在のテレビ局は報道局と制作局の人事交流がほとんどなく、報道のノウハウが生活情報番組の制作に活かされることは期待できないという。報道出身者が制作をやれば、「これは、いくらなんでも事実を曲げ過ぎじゃないか」、「演出し過ぎじゃないか」と多少は変わってくるかもしれないと吉岡は述べている。 NHKの報道局と制作局の縦割り構造の強さは専門性の育成・発揮といった側面では意義があるが、NHKとしての全社的な方針が十分に浸透せず、相互監視が効かず、協力体制が取りにくく、かつ、唯我独尊の内向き志向を助長する可能性もあると指摘されている。さらに、無用な対立軸やヒエラルキー、あるいは派閥や権力闘争を生みやすいといったマイナス面も大きいという。職員が良好なコミュニケーションを図り、共通の足場を築くことがきわめて重要だとNHKコンプライアンス委員会は主張している。
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