国民政府の銀国有令
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 14:24 UTC 版)
「冀察政務委員会」の記事における「国民政府の銀国有令」の解説
中華民国では継続していた輸入超過のための対外決済とアメリカの銀買入政策に起因する銀の海外流出のために政府系銀行の準備銀が急激に減少した。このような中国の経済危機を憂慮したイギリス政府はリース・ロスを派遣し、日本政府に対し共同で中国の銀を下支えすることで、見返りとして中国は経済安定を、日本は満州国承認を、英国は対中債務の保全を得るという腹案を日本側に提示したが、日本側では「広田対華三原則」の逸脱や、軍部の華北分離工作に対する楽観論もあり、これを拒否した。リース・ロスは南京で日本を切り離した部分の合意を中国政府と取り付け、以下の6つの要点を含んだ、実質的に元をポンドとリンクした管理通貨制度への移行と、銀の国有化、法幣の使用を強制する改革を11月3日公表した。 中央、中国、交通3銀行発行の銀行券を法定通貨と定める。銀貨流通は禁止する。 3銀行券以外の紙幣はしばらく流通を認めるが、順次法幣に切り替える。 発行準備委員会を設立する。 銀貨・地銀の所有者は、これを指定機関において法幣と交換しなければならない。違反者は処罰する。 銀本位貨幣による契約は、法貨をもって収支する。 3銀行は無制限に外国為替を売買する。 辛亥革命以来、地方政権により発行された紙幣は暴落あるいは廃棄された歴史を持ち、中国民衆の紙幣に対する信用度は低く、また特に金融知識に疎い農民層における売買取引は従来からほとんどが現銀交易のみであったことから、国民政府の銀国有と紙幣の強制運用の実施は中国北部の農民に極度の不安と恐慌をもたらした。一方、中央銀行を除く全ての銀行も保有している銀の喪失、兌換不能による紙幣価値の下落と通貨不安による物価高騰、中国北部における経済の基本であった農民と都市の経済関係の断絶による経済恐慌の危険から国有化政策に反対した。この銀国有化に伴い、中央政府は地方銀行の銀を上海に移送することを命じたが、日本軍部では華北に政権を樹立しても通貨の発行が不可能になることから反発した、日本側の駐留軍は「現銀南送阻止」を図り、これに成功した。
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