図書館の開館
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/24 14:04 UTC 版)
当時の農村部の青年の間で盛んだった娯楽には読書が挙げられ、娯楽設備としてラジオや図書館が望まれた。1928年(昭和3年)には全国各地で昭和天皇即位の礼に伴う記念行事・記念事業が実施され、安城町農会は図書館の建設を企画した。安城における図書館活動は、1931年(昭和6年)に安城町農会が財団法人安城図書館(通称 : 安城農業図書館)を設置したことを始まりとする。当時の農民は図書に接する機会に乏しく、図書館設置の目的には農業知識の啓蒙や教養の向上などがあった。当時の安城町は赤字決算を続けていたため、自治体ではなく財政豊かな安城町農会が図書館整備を主導したのである。安城町農会は安城町大字安城字数馬(現在の安城駅西立体駐車場付近)に226坪(約750m2)の土地を購入し、1928年度(昭和3年度)と1929年度(昭和4年度)の2年間で16,000円の経費を計上した。 1930年(昭和5年)8月17日、建坪70坪・延床面積120坪、木造2階建の洋館として安城農業図書館が竣工し、落成記念式典には農林省農務局長なども参列した。図書館の建物はかつて碧海郡警察署として使用されていた建物であり、安城町農会が払い下げを受けて移築したものである。碧海郡教育会より譲り受けた図書が蔵書の中心となり、これに安城町農会が購入した図書と寄贈された図書が加えられた。文部省社会教育局による1927年の『図書館一覧』によると、当時の碧海郡域には高浜町立高浜図書館、依佐美村立小垣江図書館、依佐美村立高棚図書館、依佐美村立野田図書館、依佐美村立半高図書館の5館があるのみだった。自治体農会が運営する図書館は全国的に見て珍しく、「農業図書館」の名を掲げたものは他に例がなかった。 1931年(昭和6年)1月4日には岡正雄愛知県知事から図書館設立許可を得て正式に開館。安城町農会長が初代館長を兼任し、安城町農会幹事が書記を兼務した。1932年(昭和7年)6月には非常勤の司書が配置され、1933年度(昭和8年度)には常勤職員が配置されて本格的に開館した。4月1日には館外貸出が開始され、休館日は月曜日のみ、冬季は9時-16時、夏季は8時-17時まで開館という開館規則が確立した。当時の館外貸出制度は最大2冊・最大14日間であり、保証金3円を預けることで館外貸出が可能となった。1階は辞書や雑誌類の書架がある一般室、児童室や書架がある予備室、書庫、事務室、応接室などであり、2階は会議室だった。
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