各言語の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 04:27 UTC 版)
「東ティモールの言語状況」の記事における「各言語の問題点」の解説
しかしながら、どの言語をとっても一長一短がある。 テトゥン・ディリ語 東ティモール固有の言語であるテトゥン語を基礎とした構成語。語彙の多くは、ポルトガル語からの借用語である。というのも、政治用語・経済用語の語彙が少ないことが挙げられるためである。また、書き言葉の発達が遅れている面もある。科学用語や出版物の少なさを考えると現段階では難しい面もある。標準化、語彙創造が進められている。しかしながら、人口数から教科書を作成するにもコストがかかり過ぎる点も非常に大きな欠点である。 ポルトガル語 旧植民地宗主国の言語としての利用。ポルトガルやブラジルなどとの文化交流が容易になったり、これら諸国での出版物やテレビ放送などの利用が可能になるという利点があるが、ポルトガル語を解さない大多数の国民は不便を強いられる。東ティモールの周囲にはポルトガル語を用いる国はまったくなく、経済促進効果の期待は薄い。若年層からは再植民地化と解釈され、ポルトガル人教師の入室にあわせ、高校生が教室を出て行く運動が広まっている。なお、政府は教育機関を通じ普及を図っているが、前述のようにポルトガル語話者が少ない点やボイコット問題がネックになっている。また、ポルトガル語が話せないため、研修のほとんどにポルトガル語の習得に充てられるというふうで、教えるという段階までに至っていない。さらに法文書(法律)がポルトガル語で書かれているため、公務員が十分に理解できず、行政に支障が発生しているという弊害も起こっている。 インドネシア語 ティモール島の周囲の島々で日常的に使われているほか、マレーシアやシンガポール、ブルネイで使われるマレー語とも類似言語であり、実用性はある言語だが、かつて独立運動をおこなった国民の間では抵抗感が強い。 英語 隣国のオーストラリアでは公用語である。周辺のインドネシア、マレーシアやシンガポールでさえ、英語教育に熱心であり、これらの国の指導層、富裕層は英語話者である。経済効果は大きいとされる。今後、東ティモールの指導層からポルトガル語話者が減少した場合、最も経済発展に期待のもたれるのが英語ともいわれている。各国のNGOが現地入りし無料の英会話教室を東ティモール国民に向けて開催しており、日本のNGOも行っている。 現在ポルトガルやブラジルからポルトガル語教師が同国に派遣され、小学校などで国語としてポルトガル語を教えている。しかし、インドネシア時代の24年余りにわたるポルトガル語禁止政策のため前途は多難であると言わざるを得ない。言語政策が東ティモールの今後の発展の足かせになる可能性もはらんでいる。
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