厚労省HPVワクチン副反応研究班「池田班」における副反応ミスリード騒動
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「ヒトパピローマウイルスワクチン」の記事における「厚労省HPVワクチン副反応研究班「池田班」における副反応ミスリード騒動」の解説
2016年3月、厚生労働省のHPVワクチン副反応に関連する研究班(池田班;信州大学と鹿児島大学の共同研究グループ)は、脳機能障害が起きた患者の8割弱で、免疫システムに関わる遺伝子が同じ型だったと報告した(その遺伝子の型は、日本や中華人民共和国、オセアニアに多く、ヨーロッパや北アメリカに少ない)。33名の被験者のHLA-DPB1が調査され、通常日本人では4割程の頻度で存在する「0501」という型が、8割程度の頻度であることがわかった。ワクチンの成分と症状の因果関係は不明だが、接種前に遺伝子を調べることが、副反応を回避することができる可能性があると発表した。 また池田班は、マウスに複数のワクチンを接種する実験を行い、HPVワクチンを注射したマウスの脳のみに、神経細胞に対する抗体が産生されたとも報告した。 NFκ-βp50 ノックアウトマウス(自己免疫疾患モデルマウス)へのHPVワクチン(サーバリックス)、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチンの接種の結果、1.サーバリックス接種群においてのみ、(1)マウス海馬への自己抗体(IgG)の沈着(2)この抗体(IgG)はヒト海馬へも沈着(3)末梢神経障害あり この抗体を精製して、神経障害の機序を解明する。 — 信州大学脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 池田修一、2016年3月16日 池田教授は同研究結果について、3月16日夜に放送されたTBSのニュース23で「明らかに脳に障害が起こっている」とコメントした。 村中璃子は、この調査には比較すべきでないものを比較しているなど様々な問題点があると述べた。調査対象が少なすぎることも指摘された。 厚生労働省は2016年4月16日に、池田班が示したデータによって特定の遺伝子多型を持つ人にHPVワクチンを接種した場合、記憶障害を起こす可能性が高いということは示せておらず、HPVワクチンと脳の症状との因果関係を示したものではないとし、HPVワクチン接種後脳障害などの発症者の8割に、特定の遺伝子多型が見つかるとの報道は誤りであると発表した。 6月、信州大学は、不正を疑う通報を受けて外部有識者による調査委員会を設置し、11月に「マウス実験の結果が科学的に証明されたような情報として社会に広まってしまったことは否定できない」と発表した。また実験はNFκ-βp50欠損マウスへの接種後の様子ではなく同接種マウスから血清を取り出し、これを無垢のマウス等の脳組織に反応させる手法だったこと、実験区ごとに各1匹のマウスから採取された血清のみの実験であったことが記載されている。更に再実験ではいずれの検体でも無垢のマウスの脳組織との反応を認められなかった。調査班は池田教授には、科学的な検証に耐えられる欠損マウスを用意したうえでHPVワクチン等接種の初段階からの検証実験とその結果公表を求めている。ほか、B特任教授についても複数のマウスより血清を検体を採取したにも関わらず実験結果をn=1にとどめていたことに研究姿勢の疑問が呈されている。 厚生労働省は2016年11月24日、「池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております」「この度の池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状が、HPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない」とコメントした。 池田は一連の問題提起のなかで研究内容を「捏造」とする記事を書かれたのは名誉が棄損されたとして、村中璃子に対し損害賠償のための訴訟を起こした。「捏造」と表現するに足る証拠があったか、それを裏付ける取材が十分になされたのかどうかが争われ、雑誌「Wedge」側が敗訴し謝罪広告掲載と、記事の一部が削除となり、損害賠償もウェッジが330万円を全額支払うこととなった。村中璃子は控訴を決めた。 詳細は「村中璃子」を参照
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