危険な挑戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/27 14:25 UTC 版)
危険を少しも感じない自分の特徴を「他者には無い個性・アピールポイント」と捉えてか、世間一般に「極めて危険」と認識されている行為を実行して注目を得ようとする者は、インターネットの広く普及した時代になって後を絶たなくなった。到底実行できないレベルの命知らずな行為を映像に収め、そういうものに興味を抱く他者や批判的観点で確認しにくる者を当てにして動画共有サービスやその他のSNSに動画を投稿するのである。あるいは、ライブ配信でそれを行う者もいる。この行為をイベントと捉え、協力・協賛する各種業者や物件のオーナーさえいる。 この種の行為を自分撮りする(あるいは自分撮り風に仕上げて見せる)「エクストリームセルフィー (extreme selfie)」は典型として知られている。 目の眩むような高層建築物の最上部の末端で命綱の装着も無しに曲芸的危険行為を披露する者などは、枚挙に暇がない。このような行為は「屋根登り」を意味する「ルーフトッピング(英語版) (rooftopping) 」、行為者は「ルーフトッパー (rooftopper)」、あるいは短縮して「ルーファー (rufer)」と呼ばれている。 危険行為を観る側には、恐れおののく気持ちを伝えるコメントを定型文のように寄せはするが、所詮は他人事ということで、実は面白がっているだけという視聴者が相当数いるのであり、それどころか、ルーファー達を勇気あるヒーローと見做す者まで少なからずいるわけで、エンターテインメントとして成り立ってしまう現実がある。反響を得られればその規模に応じた利益が、知名度や金銭の形で実行者に還元されるのみならず、彼らを支持するコミュニティ内に限ってのことながら名声まで得られてしまうところが悩ましい。当然、そういった成功事例は模倣をも誘因する。なかには、長く病床にある母親の世話をしながら貧しい暮らしを送ってきた若者が母親の医療費を捻出することを主目的にしてルーフトッピングの世界に飛び込み、一躍スターダムにのし上がった事例があった(2017年、中国長沙市)。ルーファー達のおおかたは、無事に動画を投稿するところまで完遂できるだけの技術を身に付けているからこそ、やっているわけであるが、より強い刺激を自ら追求する、あるいは興味本位の視聴者に求められる、そしてなかには倫理観の欠如した“イベント”協賛者との契約に縛られて続けざるを得なくなってしまうなど、次第にエスカレートしてしまう傾向がある。そして、最もシビアな現実として、「人間は過ちを犯すもの」である。話題をさらった最後の報せが「転落死」であったという悲惨な結末も、珍しくはない。上述した中国の“親孝行者”も、実情を知らされずに我が子の社会的自立を喜んでいた母親とプロポーズするはずであった恋人を残して、26歳の若さで悲しい最期を迎えてしまっている。
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