南派武術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 05:14 UTC 版)
長江以南で広く行われる武術の総称であるが、活発な地域として福建省、広東省があり、それぞれに特徴がある。広東系南派少林拳には洪家拳、詠春拳、蔡李佛などが、福建系南派少林拳には白鶴拳などがそれぞれ含まれる。広東系南派の詠春拳、白眉拳は短橋狭馬といわれる。橋は腕の使い方を示し、馬は歩形を表す。即ち狭い歩幅で立ち、腕を短く使うことが特徴である。南拳の元になったと言われる洪家拳は長橋大馬と言われ、歩幅を広く取り腕を長く使う。 洪家拳(こうかけん) 洪家拳は、南派の代表的門派であり、南拳のイメージは即ち洪家拳のイメージにとなっている。歩幅を広く取り強く拳を振るう広東南派の一派といわれているが、実は南少林寺、至善禅師伝の長橋大馬の技術と、同じく南少林寺、五枚尼姑伝の短橋狭馬両方の技法が完備されている。古伝の洪家拳(老洪拳)から長短の技術が完備され、現在の形にまとめあげたのが有名な黄飛鴻であるが、彼をモデルとした映画が何本も撮影されており、特に、劉家輝主演で映画化された「ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激闘」が有名。 詠春拳(えいしゅんけん) 詠春拳は、広東系短橋狭馬の代表格で、二字拑羊馬と呼ばれる狭いスタンスで立ち、スピーディーな手技を用いる。ブルース・リーが学んだ一派として有名である。詠春拳はブルース・リーが初めて学んだ武術として紹介されることが多いが、正確にはブルース・リーが初めて学んだ武術は父から学んだ太極拳である。伝説では南少林寺の五枚尼姑伝の拳技とされ、香港の葉問派詠春拳が最も有名であるが、他にいくつかの系統も確認されている。技術的には洪家拳と基本功で共通点が多く、両拳が技術的に交流していた事が窺い知れる。代表的な拳套(型)として小念頭、尋橋、標指があり、詠春拳にこの三套路を定めたのが詠春拳王とよばれた梁贊(1826~1901)である。木人樁(もくじんとう、木の人形)を使用した訓練でも有名である。技術的特徴は防御に重きが置かれ、詠春拳三大手と呼ばれる膀手・攤手・伏手とも全て防御技である。他に六點半棍と呼ばれる棍術と八斬刀という刀術が伝承されている。 蔡李佛(さいりぶつ) 蔡李佛の発祥は今から約170年前で、鴻勝舘蔡李佛、北勝舘蔡李佛、雄勝舘蔡李佛、洪聖舘蔡李佛の4派が有名である。比較的新しい拳術。蔡李佛百套といわれ、これは徒手や武器、対打などの型が実際に100種あるという意味ではなく、非常に多いという意味である。実際には100種を優に超える。徒手の型は”四十九套”と云われているが、その全てを教えているところはたぶん無く、系統にもよるが約10~20種ほどである。攻撃に重点が置かれ、基本は掛、哨、挿と呼ばれる代表的な3種類の攻撃技である。 白鶴拳(はっかくけん) 白鶴拳は、短橋狭馬を特徴する一派で、伝説では七娘が狐と鶴の闘う様子を見て、鶴の動きを取り入れたと言われる。狭いスタンス、短く早く使う手法は詠春拳に共通するが、技術的には根本的に別派である。 鶴の翼の動きから取り入れられた五形手(木形手、火形手、土形手、金形手、水形手)に特徴がある。現在では4つの門派に別れており、鶴のそれぞれの動作を主としていることから白鶴門鳴鶴拳、白鶴門宿鶴拳、白鶴門食鶴拳、白鶴門飛鶴拳と呼ばれる。 非常に実用的であると評価されており五祖拳や意拳に動作が取り入れられるなど大きな影響を与えている。また、空手にも関係が深い。
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