葉問派詠春拳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 15:00 UTC 版)
詠春拳のなかでも有名なスタイルの1つとして葉問派詠春拳がある。その極端にコンパクトで直截性を強調した動作は、古伝の詠春拳を意図的に整理、近代化したものであり、詠春拳の全体像から見れば独特なものであって、これが詠春拳の代表的スタイルというわけではない。更に葉問派詠春拳は實用詠春拳と伝統詠春拳に分類される。 葉問系詠春拳は中国伝統武術についてまわる陰陽、五行、八卦などの東洋哲学から脱却し、練習者に科学的論理性と徹底した理解を求める教授スタイルで知られ、合理的、実戦的であるのを特徴とする。また他の中国武術のような内功、外功といった概念を持たず、呼吸法も自然呼吸である。武術一般の内功にあたると思われる「内力」という概念もあるが、そのための特別な養成法があるわけではなく、正しく練習をしていけば長い間に自然と自覚されていくものとされている。ただし初級套路の小念頭に内功を養う効果があると指導する指導者もおり、小念頭には各種の意念を用いることや、集中力、自然呼吸を重視する点において立禅と共通する要求が多い。 目視に頼らず、むしろ接触感覚を重視するために、比較的スタイルの近い門派で必要とされる視力の訓練も存在しない。身体に負荷をかけたり、身体を打ち付けて鍛えるといった外功的な訓練も行なわず、力みを極端に嫌い、南方の拳法にある剛強なイメージからは外れた訓練体系であることで知られる。この「無駄なことをしない」という思想は、ジークンドーにも受け継がれている。 シンプルではあるが戦闘理論に関しては非常に厳密な理解と体現を要求されるため、実際には習得、体現の難しい武術である。そのため対人練習に非常に多くの時間を割き内部感覚を養成する。そして、世界的に広まったことにより、他の格闘技術などの影響を受けて改変、変容し、新たな一派が誕生するという傾向がある。内部感覚さえ身につけば自由に改変できるという考えから、香港の伝統的詠春拳といえど指導者や武館によっては指導内容に違いがあるのも特色のひとつとされる。 近年では、新たに派生したものとしてEBMAS(Emin Boztepe Martial Arts System)や、イスラエルの軍隊格闘術であり徒手格闘の一部に詠春拳の技術を採用しているクラブ・マガも誕生している。現在も世界的な普及発展を続けているが、これは主に香港返還による人材の海外流出によるもの。また、葉問派詠春拳のイメージとしてブルース・リーに加え、ドニー・イェン主演の映画『イップ・マン 序章』や『イップ・マン 葉問』というのも広く知られるようになった。
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