医学・薬学的使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 04:23 UTC 版)
ヨウ素131は治療(放射線療法)として核医学で用いられ、そして用いられた場合は診断用スキャナで可視化できる。ヨウ素131をヨウ化塩として用いるのには、甲状腺の正常な細胞のヨウ素吸収のメカニズムを利用している。放射線治療での使用の例は、組織がヨウ素を吸収してしまい組織の破壊が望ましい場合である。 ヨウ素131の主要な用途は、甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進症)と、ヨウ素を吸収する一部の甲状腺癌の治療が挙げられる。従ってヨウ素131は、直接の放射性同位体療法として、バセドウ病による甲状腺機能亢進症と、時に活動過多の甲状腺結節(悪性でない異常活性の甲状腺組織)を治療するために用いられる。バセドウ病由来である甲状腺機能亢進症を治療するための放射性ヨウ素の治療上における使用は、1941年にSaul Hertz(英語版)によって最初に報告された。 治療目的で意図的にヨウ素131を投与する際には、数億 - 数十億ベクレルを投与する。これによって甲状腺に照射される放射線量は、数十シーベルト(ミリもマイクロもつかないことに留意)にもなる。 ヨウ素131同位体はまた、例えば褐色細胞腫や神経芽細胞腫の画像診断と治療のためのヨウ素131-メタヨードベンジルグアニジン(ヨウ素131-MIBG、131I-MIBG、[I-131]MIBG。2021年1月28日、「MIBGシンチグラフィ陽性の褐色細胞腫・パラガングリオーマ」の適応で承認申請された)のような、治療に使用することができる特定の放射性医薬品に対して、放射性の標識として使用することができる。これら全ての治療上の使用において、ヨウ素131は狭い範囲へのベータ線放射により細胞組織を破壊する。細胞組織に対する放射線損傷のおよそ90 %はベータ線により、残余はガンマ線による(放射性同位体から、より長い距離まで到達する)。ヨウ素131はガンマ放出体でもあるため、治療での使用後、診断用スキャナで可視化できる。 甲状腺における少量のベータ放射線による発ガン性のため、ヨウ素131は主として(あるいは純粋に)診断の用途に使用されることは滅多にない。とはいえ、過去にはその生産の容易さと低価格のためにこれはより一般的ではあった。その代わりに、より純粋にガンマ線を放射する放射性ヨウ素であるヨウ素123が、診断上の検査(甲状腺の核医学走査)では使用される。ヨウ素125もまた、診断により長い半減期を持つ放射性ヨウ素が必要な場合や、近接照射療法治療(同位体は小さな種子のような形体の金属カプセルに封じられる)で時折使用される(ベータ線の混じらない低エネルギーのガンマ線を放射するヨウ素125が有用であるので)。ヨウ素のその他の放射性同位体は、近接照射療法では決して使用されない。 日常的に輸送される下水汚泥がカナダ=アメリカ国境で通過を拒否されたことがあり、これは医療用同位体としてのヨウ素131の使用が原因とされている。上記の物質は、医療用の施設から直接、あるいは治療を受けた患者が排泄することにより下水道に入り込む可能性がある。
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