治療目的
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 05:16 UTC 版)
本症の治療目的には以下の3つがある。 レートコントロール 心房細動のまま、脈拍数のみを整える事。 リズムコントロール 洞調律に戻して維持する事。 血栓症・塞栓症の予防 ワルファリン、アスピリン、ダビガトラン(商品名プラザキサ)、リバーロキサバン(商品名イグザレルト)などを用いて脳梗塞などの合併症を予防する事。 Affirm studyの結果、レートコントロールと抗凝固療法を行った場合とリズムコントロールを行った場合ではレートコントロールと抗凝固療法を行った場合の方が予後がよいことが明らかになった。症状がない心房細動の場合は、来院時の心電図検査とホルター心電図以外に心房細動があるのかを診断する方法がなく、治療が不完全になる可能性が高いということが示唆された。抗凝固療法ではなく抗血小板療法でもアスピリンを300mg程度の高用量で用いれば脳梗塞のリスクを20%ほど軽減できるという報告もあるが、日本循環器学会のガイドラインでは高齢者でも抗凝固療法の施行を推奨している。ワルファリンを適切にコントロールすれば最終的な予後が改善するが、ワルファリンの開始、維持は患者の治療に対する意欲がないと難しい。頻回の採血によるモニタリング、投与量の調節、納豆・クロレラなど食事由来ビタミンKの禁止、他の薬剤との相互作用、外科的処置を行う場合の休薬、不十分な管理での出血でのリスクを考慮すると治療の意欲が乏しい段階では実行は難しい。抗凝固療法は成功すれば約90%の脳梗塞防止効果があるがワルファリンの導入を急ぐあまり、他の生活習慣病の治療が不十分になると最終的予後は悪化するため難しいところである。 ワルファリンの導入は一日2mg(高齢者であれば1.5mg)位から行うのが無難とされている。2週間後のPT-INRで1.5mg未満であれば1mg増量、1.5〜1.6の間であれば0.5mg増量し2週間後再検という操作を繰り返すことが多い。5mg以内で1.6〜2.6のPT-INRで安定することが多い。その後はPT-INRが2.6以上ならば0.5mg減量、2回連続で1.6を下回れば0.5mg増量するといった微調整を行う。高齢者の場合、食欲不振などでコントロールが乱れることも多い。 経口選択的凝固因子拮抗薬であるダビガトランやリバーロキサバンは食事の影響を受けず、APTT測定もほとんど必要ない。日本では、2011年3月にダビガトラン(プラザキサ)が薬価基準に収載された ことなどを受け、日本不整脈学会から心房細動の薬物療法についての声明が出された。これにより、ダビガトランによる抗凝固療法を行うことも増えている。
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