加速度から幾何へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/26 18:54 UTC 版)
「一般相対性理論の概説」の記事における「加速度から幾何へ」の解説
重力と加速度の等価性、および潮汐力の役割を探究する中で、アインシュタインは表面の幾何学との類似性をいくつか発見した。1つの例は慣性基準系(自由粒子が一定速度で直線経路に沿って滑走する)から回転基準系(粒子の運動を説明するために見かけの力に対応する追加の項を導入する必要がある)への移行である。これはデカルト座標系(座標線が直線)から曲線座標系(座標線が直線である必要はない)への移行と類似している。 より深みを持つ類似は潮汐力を曲率と呼ばれる表面の性質と関連付ける。重力場の場合、潮汐力の有無が、自由落下する基準系を選択することにより重力の影響を取り除くことができるかどうかを決定する。同様に曲率の有無が表面が平面と同等であるかどうかを決定する。1912年の夏、これらの類似にインスピレーションを受け、重力の幾何学的定式化を探究した。 幾何学の基本的な物体(点、線、三角形)は伝統的に3次元空間もしくは2次元表面で定義される。1907年、スイス工科大学でアインシュタインの数学教授を務めていたヘルマン・ミンコフスキーはアインシュタインの特殊相対性理論の幾何学的定式化を導入した。ここには空間だけでなく時間も含まれていた。この新しい幾何学の基本的な実体は4次元時空である。動く物体の軌道は時空の曲線である。方向を変えずに一定速度で移動する物体の軌道は直線に対応する。 表面については、19世紀初頭にカール・フリードリヒ・ガウスにより平面の幾何学から一般的な曲面の幾何学への一般化が記述されていた。この記述は1850年代にベルンハルト・リーマンにより導入された数学的形式主義における高次元空間に一般化された。アインシュタインはリーマン幾何学の助けを借りて重力の幾何学的記述を定式化した。ここでは曲面が通常の平面の一般化であるようにミンコフスキーの時空が歪んで曲がった時空に置き換えられる。埋め込み図は、教育の文脈で曲がった時空を説明するのに使われる。 アインシュタインはこの幾何学的類推の妥当性に気づいたのち、欠けている理論の礎石、物質が時空の曲率にどのように影響するかを記述する方程式を見つけ出すのに3年を要した。今日アインシュタイン方程式(より正確にはアインシュタインの重力場方程式)として知られているものを定式化したのち、1915年後半にプロイセン科学アカデミーのいくつかのセッションで自身の重力の理論を発表し、1915年11月15日の最終プレゼンで最高潮に達した。
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