はけ【刷=毛/刷=子】
刷毛
刷毛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 22:08 UTC 版)
刷毛としての利用は、伝統工芸技術として日本で発展してきた漆工芸において、漆刷毛(うるしばけ)という形で昔から欠かせないものになっている。これは、高品質な一本物の長い人毛(直毛)を束ね、漆糊(うるしのり。澱粉糊に生漆〈きうるし〉を混ぜ込んだもので、布や木などの接着剤)で固めて板状に加工し、それを白木の板で挟み込んで刷毛の形に整えたもので、日本における刷毛の原型とされている。漆刷毛は鉛筆の芯のように先端から柄尻まで固めた人毛が詰まっているので、鋭さが鈍ってしまった鉛筆の先を削って尖らせるのと同じように、使うことで乱れてしまう先端部を小刀などで削って刷新しながら消費してゆくものである。毛は一本物であるため、抜け落ちて塗り面を乱すということが無い。仏教が伝来して日本各地に寺院が建立されてゆくなかで、仏像や美術用具、その他に漆を塗るために使われるようになったとされている。塗師によれば、現在でも馬の尻尾の毛以外の他素材で代用することは考えられない。代用が利かない理由の第一はその長さで、全長200~250ミリメートルという漆刷毛に必要な長さの毛は、人毛と馬の尻尾の毛くらいでしか安定して確保できないことがある。そして人毛が素材として最高級である理由は、馬の毛では太過ぎて漆を塗るのには刷毛目が立ち過ぎて不向きなことにある。その点、人毛の太さはちょうど良く、刷毛目も立ちにくいという。なお、昔から海女の髪が良質とされている。海水にさらされて適度に脂が抜けるため、漆の含みが良いという。また、現在(※令和時代初頭)の漆刷毛職人にはストックしてある明治時代の女性の頭髪を材に生産している者もいるが、これもやはり適度に脂が抜けるからという。ただ、今では刷毛用の国内産の人毛は入手困難になってしまっており、ほとんどが中国産になっている。2010年代後期後半時点で、漆刷毛職人の工房は大阪市にある老舗1軒と東京にある1軒しかない。
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