再始動への努力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/15 02:30 UTC 版)
「ブリティッシュ・エアウェイズ9便エンジン故障事故」の記事における「再始動への努力」の解説
その頃、機内は不気味に静まり返り、エンジンは炎を上げていた。乗客たちは動揺し始めた。一方、コックピットの中では今まで起きたこともない事態に、当初は計器の故障や、燃料ポンプの故障を疑ってみたが、いずれも異常はなかった。機長は直ちに緊急連絡である「メーデー」を発する指示を出し、航空機関士はエンジンを再起動させようとした。副操縦士はトランスポンダを緊急用のスコーク7700にセットし、無線でジャカルタ管制に「Mayday! Mayday! Mayday! Speed Bird 9. We've lost all 4 engines!(メイデイ!メイデイ!メイデイ!BA9便、エンジン4基全て停止!)」と呼びかけたが、謎の光のためか無線はなかなか通じず、ジャカルタ管制は「Speed Bird 9. You've lost No.4 engine?(BA9便、第4エンジンが止まったのですか?)」と聞き返してくるような状態であった。これを傍受していたガルーダ・インドネシア航空875便のパイロットが間に入って管制に連絡を入れ、ようやく状況が伝えられた。その頃航空機関士は第4エンジンを復活させようと何度もエンジンの再点火操作を続けていたが、エンジンは起動しなかった。 幸いなことに、発電機や油圧ポンプは作動しており、操縦を続けることが出来たが、計器は機長席と副操縦席とで表示が一致しなくなり、無線も雑音だらけになった。そんな中、機長は機体を毎分500フィートで降下させながら、ジャカルタへ向かうべくコントロールしていた。この降下率なら140マイル(約224キロメートル)は飛ぶことが出来る、とクルーは落ち着きを取り戻していた。機長は2か月前に全エンジン停止を想定したシミュレーション訓練を受けていた。 ジャカルタへ向かうにはジャワ島の山岳地帯を超える必要があり、それには1万1500フィートの高度を保たなければならない。エンジンの力が無ければ、高度は維持できないので、エンジンが最後まで回復しない場合には真っ暗な海への着水しか選択肢がなかった。クルーは何度も必死にエンジンの再始動を試みるが、エンジンは甦らなかった。機長が乗客にアナウンスする時間がなかったため、乗客たちは不気味な静けさと再始動に失敗して炎を出すエンジンを見ながら、ただただ静かにしていた。客室乗務員たちは乗客たちを元気付けるため、機内を歩き回っていた。 その頃コックピットでは更なる危機が生じていた。エンジン停止により機内の与圧が効かなくなったため、酸素マスクをつけようとしたのだが、副操縦士のマスクが壊れた。このままでは酸素欠乏症になり失神してしまう危険があるため、機長は降下率を上げ、酸素を吸入できる高度まで下げることにした。途中でマスクの修復には成功したのだが、降下速度を上げたことによりエンジンを再起動する猶予時間が短くなってしまった。乗客達は客室でも酸素マスクが下り、降下が早まったことで恐怖を感じ始めていた。
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