修二会拝聴の要領
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 10:00 UTC 版)
修二会の行は、許可を得た男子が外陣に入ることを許されるほか、四方の局と呼ばれる拝殿で自由に拝聴することができる(ただし静粛が絶対条件)。しかし真暗闇のなか物音や内陣の壁に遮られて拝聴していても一体今何が行われているか聴き取れないことがほとんどである。それをいくぶんかでも理解するためには行の構成を前もって簡単に頭に入れておくことが必要である。 行の内容は基本的には日中、日没、初夜、半夜、後夜、晨朝と、六回の悔過作法を繰り返すことにある。ただし同じ悔過作法といっても時により日により、長さや唱えられ方にかなりの異同がある。初夜と後夜では、悔過作法自体の時間が長い上に、大導師作法、呪師作法が加わる。そこで、一日の日程の骨子は次のようになる。 「悔過−悔過−(長い休憩、お松明)−悔過−大導師−呪師−悔過−(短い休憩=本手水)−悔過−大導師−呪師−悔過」 原則的には、日中の悔過作法は一日一度の食作法が終わって午後1時頃始まり、お松明が終わって初夜の始まるのが7時半頃、本手水が11時頃、晨朝の悔過作法の終わるのが午前1時頃である。ただし3月12日はお水取りのスケジュールがこむので4時頃までかかる。 悔過作法の大要は、毘盧遮那仏や、十一面観音など、仏の礼賛にある。テキストはさまざまな仏典からの抜粋であり、内容はその仏の御名の連呼、仏の美質の列挙といってよい。ただし中ほどで唱えられる呪願は練行衆がこの二週間どういうことをやるかという、いわば修二会の宣誓である。いずれもが漢文である。理解できない漢文が続くなかで式次第のどの辺りにいるのかを知るための目やすとなる特徴的な行は、差懸を踏み鳴らして練行衆たちが堂内をまわる、散華の行道と般若心経の行道である。散華の後に呪願があり、有名な「南無観」の宝号があって、宝号の間に五体投地がある。膝を五体板に打ちつけて行うこの行は懺悔の心を最も体で表している。最後に近く、心経の行道があり、しめくくりに「たいしゃ、こい、こい」という神秘的な唱えごとが聞こえてくる。大悲者とは、すなわち十一面観音、こいとは回向一切の縮まった形である。 大導師作法では、こんどは仏でなく日本全国の神々を請来し(神名帳読上げ)、次に、小さいところでは行の無事、大きいところでは世界平和を祈願する。2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が行中に出来したときには、犠牲者の冥福を祈るための祈願が急遽加えられている。すべてが日本語で行われるのだが、おおむね早口で唱えられるため、祈願の区切りごとに「神呪の御名」と唱えられる、この決まり文句しか聞きとれないことが多い。過去帳は5日と12日、この作法の間に読み上げられる。 呪師作法は、道場である二月堂を清浄にするため、悪鬼や魑魅魍魎を追い払う儀式である。堂内に四天王を呼び入れるために東西南北に向かって「於我勧請来宝殿、証知証誠勧請下」と高らかに唱えられるメロディーが忘れがたい。この作法では漢語だけでなく、梵語も登場する。最終3日間の達陀の行法は後夜の呪師作法の後に来る。 問題はひとつの作法から次の作法にいつ移行するかだが、悔過作法と大導師作法、大導師作法と呪師作法との間には法螺貝の吹き合わせがあるので簡単に場面転換のきっかけを知ることができる。
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