保守/ナショナリズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 06:59 UTC 版)
「カントリー・ミュージック」の記事における「保守/ナショナリズム」の解説
カントリーは、音楽的には様々な価値観を取り入れて発展しているが、音楽家やファンの政治的スタンスや歌詞に込められた心情の面では保守的な部分が強い。ルーツである開拓民の民謡から派生しているため、自分の家族や故郷の州や町、また田舎の素朴さ、暖かさ、荒々しさなどを愛し、カウボーイやヒルビリー、レッドネックといった自分の田舎っぽいキャラクターを肯定した歌詞が多く、その裏には東海岸、西海岸や都会に対する対抗意識や反発も見られる。 そしてそれがさらに大きくなると、愛国心やナショナリズムと結びつき、アメリカ的価値観やアメリカ的自由を強調する。 その代表曲が1980年代初頭のリー・グリーンウッド(Lee Greenwood)による"God Bless The USA"である。 2001年の9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件以降、その右派的傾向はますます強くなり、元軍人である父親を尊敬し、自身も米軍基地などで慰問コンサートを開くトビー・キース(Toby Keith)の"American Soldier"、イラク戦争開戦前後に、同時多発テロ事件を持ち出して戦争支持を主張する、ダリル・ウォーリー(Darryl Worley)の"Have You Forgotten? "などが発売された。だが、トビー・キースは米兵の戦死者が増加するにつれ、自分の行動が正しかったかどうかわからないと語っていた。 また同時期に、女性カントリー・トリオ、ディクシー・チックスのボーカル、ナタリー・メインズ(Natalie Maines)がコンサート中に、イラク戦争に絡みジョージ・W・ブッシュ大統領について「合衆国大統領が(私たちと同じ)テキサス出身である事を恥じる。」と発言したのが波紋を呼び、中西部から南部を中心に 全米の多くのラジオ局で彼女たちの曲が外され、カントリー・ファンや大統領支持派によるCDの不買・廃棄キャンペーンなどが行われるなど、ファンや業界の保守・愛国思想が露骨に現れた。また、本人や関係者に対する嫌がらせや脅迫も相次ぎ、事実上、業界から干される格好となり、さらに育児なども重なり、活動を一時的に停止する。しかしながら2006年には、この騒動を綴ったドキュメンタリー映画『Shut Up & Sing (公式webサイト)(黙って歌ってろ!)』が公開され話題となり、また"Not Ready To Make Nice"「まだ(皆の望むような)よい子にはなれない。」というタイトルのシングル曲を含めたアルバムも発表され、カントリー以外の音楽業界やリベラル派のファンの支持を受け、2007年のグラミー賞においては、最優秀アルバム賞を含む5冠を獲得して復活を遂げた。
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