住宅問題と住宅政策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 17:26 UTC 版)
生活の基本要素を指す「衣食住」という言葉が存在するように、住宅は人間の生活にとって不可欠なものである。しかし住宅はこの三要素の中でも飛び抜けて高額なものであり、十分な質の住宅を確保できない人々は世界中に数多く存在する。定まった住居を持つことができず路上生活や野宿を余儀なくされる人々はホームレスと呼ばれ、社会の最貧困層となっている。また、野宿とまでは行かなくとも、やはり住居を持てず簡易宿泊所などに泊まらざるを得ない人々も存在する。すべての人間が適切な住居に居住することができるという権利は居住の権利と呼ばれ、社会権に属する。1948年に国際連合総会で採択された世界人権宣言では、25条1項においてこの権利が規定されている。地主に対して家賃の値下げ、住環境の整備を訴えたり、行政機関に対して公営住宅の拡充を求める社会運動を借家人運動と呼ぶ。 適切な住宅の供給は社会福祉において重要な論点の一つであり、各国政府は公営住宅の建設をはじめとするさまざまな住宅政策を実施している。日本では第二次世界大戦後、地方公共団体が低所得者層に供給する公営住宅、日本住宅公団が中所得者に集合住宅や分譲住宅を開発して提供する公団住宅、そして中所得者層に低利の融資を行い住宅建設を促進する住宅金融公庫が設立され、20世紀末に縮小・廃止されるまで住宅の安定供給に大きな役割を果たしてきた。また福利厚生の一環として、社員に社宅や寮を提供している会社も多い。ただし、多くの国において主に住宅を建設しているのは民間である。住宅地を開発し、住宅を建設して販売する産業は住宅産業と総称される。住宅関連の産業としては、大規模な宅地造成やマンション建設を行うデベロッパーをはじめ、主に戸建て住宅の建設を行うハウスメーカーや工務店といった住宅建設企業、完成した住居の売買や賃貸を行う不動産業、さらには住宅設計や住宅設備など、その分野は多岐にわたる。 住宅の所有形態は自己が所有し居住する持ち家と、他人が所有する住宅を借りて居住する賃貸住宅の2つが存在する。日本の持ち家率は2018年時点で61.2%にのぼる。諸外国の持ち家率は国によって異なるものの、先進国ではおおむね2000年代前半で5割から7割程度のところが多い。また、多くの国で賃貸住宅に比べ持ち家のほうが平均面積は広い。 住宅は必需品である上に高額な商品であるため、住宅産業が経済に占める割合は大きく、その経済波及効果も大きなものである。しかし、特に都市部においては旺盛な需要に対し供給が十分でないことが多く、さらに投機的資金が流入しやすいこともあって、住宅用の土地および住宅価格の高騰がしばしば問題となる。たとえば日本では、1970年代から1980年代末のバブル経済期にかけて地価が暴騰し、住宅の建設にも悪影響を及ぼした。こうした住宅バブルは世界的にしばしば発生しており、なかでも2007年にアメリカでサブプライム・ローンが不良債権化して起きたサブプライム住宅ローン危機は翌年のリーマン・ショックへとつながり、世界金融危機 (2007年-2010年)を引き起こして世界経済に大打撃を与えた。一方で、日本では過疎化や高齢化、土地登記の煩雑さなどから2010年代に入り空き家の数が急増し、社会問題となっている。
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