仏教の戒律に由来する理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 10:12 UTC 版)
「女人禁制」の記事における「仏教の戒律に由来する理由」の解説
本来の仏教には、ある場所を結界して、女性の立ち入りを禁止する戒律は存在しない。和僧道元の『正法眼蔵』にも、日本仏教の女人結界を「日本国にひとつのわらひごとあり」と批判している箇所があり、法然や親鸞なども女人結界には批判的であった。 ただし、仏教は、性欲を含む人間の欲望を煩悩とみなし、智慧をもって煩悩を制御する理想を掲げている。そのため出家者の戒律には、性行為の禁止(不淫戒)、自慰行為の禁止(故出精戒)、異性と接触することの禁止(男性の僧侶にとっては触女人戒)、猥褻な言葉を使うことの禁止(麁語戒)、供養として性交を迫ることの禁止(嘆身索供養戒)、異性と二人きりになることを禁止(屏所不定戒)、異性と二人でいる時に関係を疑われる行動することを禁止(露処不定戒)など、性欲を刺激する可能性のある行為に関しては厳しい戒律がある。 また修験者は、半僧半俗の修行者であるが、その場合でも、修行中は少なくとも不淫戒を守る必要がある(八斎戒の一つ)。 ちなみに在家信徒も、淫らな性行為は不邪淫戒として禁じられている(五戒の一つ)。また在家者も坐禅や念仏などの修行に打ち込む期間だけは不淫戒を守ることが薦められる。 それらの目的を達成するために、修験道では、男性の修行場から女性を排除する必要性があったと考えられる。逆に女性出家者が入る尼寺は(女性出家者を性暴力などの被害から守る理由で)元々、僧寺(男性出家者の施設)に付属する施設と規定されており、そのため男性を厳格には排除しづらかった。 また仏教では本来、破戒僧が自分の愛人を出家させて身辺に置くことを防ぐため、仏陀を除く出家者は異性の出家者を弟子として得度することは禁じられている。(僧を得度できるのは僧のみ。尼を得度できるのは尼のみ) 日本仏教の黎明期に善信尼ら女性出家者はいた。その後、戒壇の設置に朝廷の許可が必要であった奈良時代以降、鎌倉時代くらいまで、戒壇の設置を許された東大寺や延暦寺などの戒壇が全て男性僧侶を対象としており、女性(尼)の授戒得度が困難であった点との関連も考えられている。 ただ仏教の戒律は、上記のように出家者、修行者、在家で求められる戒律がそれぞれ異なり、戒律の内容や解釈、厳格さも各宗派で異同がある。そのため「男子禁制」の尼寺や、山岳部にあっても女人禁制が取られていない寺院も存在する。
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