バージナルのまえにすわるわかいおんな〔‐のまへにすわるわかいをんな〕【バージナルの前に座る若い女】
ヴァージナルの前に座る若い女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 07:56 UTC 版)
『ヴァージナルの前に座る若い女』(ヴァージナルのまえにすわるわかいおんな、蘭: Zittende vrouw aan het virginaal, 英: A Young Woman Seated at the Virginals)は、オランダの画家ヨハネス・フェルメールが描いた絵画。キャンバスに油彩で描かれており、フェルメール作品の中でも簡素な構成となっている。その真贋をめぐって1940年代から論争があり、1993年から鑑定が始まった。1990年代の科学分析、2001年に開催された「フェルメールとデルフト派」展での参考出展、その後の修復をへて、フェルメール晩年の真作とする意見が大勢を占めている。顔料などの素材、技法、スタイルがフェルメールに近く、同時代の画家で他に描けそうな人物は知られていない。
注釈
- ^ 初期のフェルメール作品として個人所有しているものとしては日本の国立西洋美術館に寄託されている『聖プラクセディス』がある[2]。
- ^ こうした特徴がある作品として、『ギターを弾く女』、『信仰の寓意』、『ヴァージナルの前に座る女』などがある[7]。
- ^ 破産財産の管財人として1676年9月にアントニ・ファン・レーウェンフックが選任された。当時のレーウェンフックは水中の微小動物(微生物)の研究に熱中していた[11]。
- ^ カタリーナの母マーリアは、全財産を孫(フェルメールとカタリーナの子供)に譲る内容の遺言を残して死去した。この遺言によってカタリーナは貧しい暮らしを余儀なくされたが、子供たちは債権者から守られて成人後に財産を相続できた[12]。
- ^ メーヘレンは、当時オランダを占領していたナチス・ドイツのヘルマン・ゲーリングらに贋作を販売した[16]。1945年に連合軍によってオランダが解放されるとナチス協力者への追及が進み、メーヘレンも親ナチの芸術家として逮捕された[17]。メーヘレンはフェルメール作として売った絵が贋作であると自白し、そこで初めて明らかになった[18]。
- ^ オランダの美術界では、作品の真贋を検討する大規模な企画としてレンブラント・リサーチ・プロジェクトも行われた[19]。
- ^ 18世紀以降に鉛錫黄の使用が減るにつれて知識も失われてゆき、成分に錫が含まれていることが知られるようになったのは1940年代以降だった[26][3]。
- ^ バイトは南アフリカのダイヤモンド事業家で、フェルメールの『手紙を書く婦人と召使』も購入している[30]。
- ^ オランダ美術の専門家であるA・B・デ・フリース(A.B. de Vries)は1939年に本作品を真作と発表したが、自著『デルフトのヤン・フェルメール』第2版(1948年)で考えを撤回してフェルメールの追随者が描いたと論じた[30][32]。
- ^ 真作と主張したのは芸術家・キュレーターのローレンス・ガウイングや、美術史家・作家のルートヴィヒ・ゴールドシャイダーら少数だった[30]。
- ^ ロランはパウル・クレー、ポール・シニャック、ピエール・ボナール、ジャン=ポール・リオペルの作品4枚との交換で本作品を購入した[26]。
- ^ ルービンスタインはオールド・マスター・ドローイング部門の責任者だった。真贋の鑑定はオールド・マスター分野ではしばしば行われる[34]。
- ^ 顔料の分析ではエネルギー分散型X線分析(EDX)が使われた[26]。この時に依頼された専門家はシェルドンの他にキャサリン・ハッセル、ニコラ・コスタラスらがいた[1]。
- ^ 「フェルメールとデルフト派」展は、ニューヨークのメトロポリタン美術館とロンドン・ナショナル・ギャラリーで開催された[25]。フェルメール作品18点を中心に絵画・素画・工芸157点を展示し、デルフトの芸術環境の中にフェルメールを位置づける企画だった[36]。
- ^ ルービンスタインは、本作品への疑問が消えない大きな原因はオリジナルの状態で見ていない点にあると考えた[24]。
- ^ 委員会にはアムステルダム国立美術館の絵画修復部門責任者エリー・ウォレート(Arie Wallert)や、17世紀の衣装の専門家でレンブラント・リサーチ・プロジェクトのメンバーでもあったマリネッケ・デ・ウィンケル(Marieke de Winkel)らも参加した[24][3]。
- ^ 美術史家でフェルメール研究者のアルバート・ブランケルトは、1975年に本作品を見せられた時はフェルメール作ではないと判断した。その後、修復後に見た時はフェルメール作の可能性があると考えるようになった[37]。
- ^ フェルメール作品が競売に出るのは1921年の『恋文』以来だった[39]。
- ^ ウィンはラスベガスのカジノ経営者でコレクター[37]。
- ^ ライデン・コレクションはオランダ黄金時代の画家の作品をはじめとして絵画や素画を所蔵している[1]。
- ^ 2008年の東京都美術館の「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」にも展示された[37]。
- ^ 2023年のフェルメール展は、通常は貸し出されないフリック・コレクションの3点を含めて世界7ヶ国の美術館やコレクションから計28点が集まった[42]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j “Young Woman Seated at a Virginal”. ライデン・コレクション. 2024年2月8日閲覧。
- ^ “聖プラクセディス”. 国立西洋美術館. 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館 (2023年8月29日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k Essential Vermeer 2024.
- ^ 桜田 2017, pp. 109–110.
- ^ 小林 2008, p. 130.
- ^ 桜田 2017, pp. 104–107.
- ^ 小林 2008, pp. 130–134.
- ^ 小林 2008, pp. 132–134.
- ^ 小林 2008, pp. 34–35.
- ^ a b 小林 2008, p. 35.
- ^ スナイダー 2019, p. 360.
- ^ 小林 2008, p. 40.
- ^ 小林 2008, pp. 35, 37.
- ^ a b c d e 朽木, 前橋 2011, p. 86.
- ^ a b ウイン 2007, p. 289.
- ^ a b ウイン 2007, pp. 26–27, 305–305.
- ^ ウイン 2007, pp. 26–27.
- ^ ウイン 2007, pp. 233–235.
- ^ 小林 2008, p. Xii.
- ^ 小林 2008, pp. 66–68, 159–160.
- ^ 小林 2008, pp. X–Xi.
- ^ a b 小林 2008, p. Xi.
- ^ a b 朽木, 前橋 2011, pp. 90–91.
- ^ a b c d e f 朽木, 前橋 2011, p. 90.
- ^ a b c 朽木, 前橋 2011, p. 89.
- ^ a b c d 朽木, 前橋 2011, p. 87.
- ^ a b 小林 2008, p. iX.
- ^ a b 朽木, 前橋 2011, p. 88.
- ^ 小林 2008, p. 資料編48.
- ^ a b c d e f 小林 2008, p. viii.
- ^ 朽木, 前橋 2011, pp. 85–86.
- ^ 朽木, 前橋 2011, pp. 86–87.
- ^ a b c 朽木, 前橋 2011, pp. 85–87.
- ^ 朽木, 前橋 2011, p. 85.
- ^ a b 朽木, 前橋 2011, pp. 87–88.
- ^ 小林 2008, p. ii.
- ^ a b c d 朽木, 前橋 2011, p. 91.
- ^ 朽木, 前橋 2011, pp. 89–90.
- ^ 朽木, 前橋 2011, pp. 86, 91.
- ^ a b 朽木, 前橋 2011, pp. 85–87, 91.
- ^ ウイン 2007, p. 281.
- ^ “門外不出の作品も。史上最大規模のフェルメール展がアムステルダム国立美術館で開幕”. 美術手帖 ウェブ版 (2023年2月9日). 2024年2月8日閲覧。
ヴァージナルの前に座る若い女
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「フェルメールの作品」の記事における「ヴァージナルの前に座る若い女」の解説
制作年代:1670年頃 技法:カンヴァス、油彩 サイズ:25.5×20.1cm 所蔵:個人蔵 来歴:ベイト・コレクション旧蔵。1960年にベイト家からブリュッセルの個人に譲渡。2004年、サザビーズに出品。 本作品はベイト・コレクション旧蔵で、文献で初めて紹介されたのは1904年であるが、長年模作または贋作と見なされていた。専門家による鑑定の結果、キャンバスと絵具が17世紀のものであることが明らかとなり、フェルメールの真作と見なされるようになったのは2004年のことであった。そして同年のサザビーズのオークションに出品されて一般に知られるようになった。2008年の東京におけるフェルメール展の監修者であるピーター・C・サットンは、この作品のカンヴァスの組織が『レースを編む女』のカンヴァスとほぼ同一であり、両者は同じ布から裁断されたと推定されること、本作品と『レースを編む女』のモデルの髪型がほぼ同じであること、本作品にはフェルメール特有の画材である、高価なラピスラズリが使用されていることなど、作風、技法の両面から、本作をフェルメールの真作と断定している。一方、小林頼子のように本作を真作と認めるにはなお検討を要するとする立場の研究者もいる。 詳細は「ヴァージナルの前に座る若い女(英語版)」を参照
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