ワイルドキャットの目標と手法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 06:21 UTC 版)
「ワイルドキャット・カートリッジ」の記事における「ワイルドキャットの目標と手法」の解説
ワイルドキャット・カートリッジは様々な理由で開発される。通常は、その目標は、市販のカートリッジのいくつかの特性を、与えられた条件の中で最適化することである。より高い速度、大きなエネルギー、より良い効率、より少ないばらつき(つまり、より良い精度)を、特定の管轄における特定の獲物の狩猟の際に、合法的に許される口径や弾頭の重量の制限の中で得るのが、主な理由である。メタリック・シルエット・シューティング(英語版)というスポーツは、多くのワイルドキャットを生み出し、いくつかの小銃弾は拳銃から発射できるように改造された。自動拳銃を狩猟や競技に使う場合、ソフトノーズやホローポイントのフィーディング(弾倉から薬室への装填)を改善するのも、目的の一つである。たとえば、ストレートな薬莢の.45ACP弾はホローポイント弾頭のフィーディングで問題が起きるので、ボトルネックの.38/.45クラーク弾(英語版)が開発された。 一般的に言って、ワイルドキャット・カートリッジを開発する理由には、以下のようなものがある。 薬莢の容量(ケース・キャパシティ)を増やすか、口径を減らすことで、より高い速度を得る。 ケース・キャパシティを増やすか、口径を増すことで、より大きなエネルギーを得る。 ショルダーの角度(ショルダー・アングル)を増やすか、薬莢を短縮するか、薬莢のテーパーを小さくすることで、より良い効率を得る(砲内弾道学(英語版)も参照)。 特定の弾頭の直径、重量、速度に応じてケース・キャパシティを調整することで、ばらつきをなくす。 フィーディングの問題を解決する。 ワイルドキャット・カートリッジを開発する方法には、以下のようなものがある。 冷間加工(コールド・フォーミング)。ペアレント・ケースには潤滑油を塗り、そのワイルドキャット・カートリッジの口径のリローディング・ダイに挿入して注意深く力をかける。これによって、薬莢は新しい形に変形させられる。この方法は、薬莢の寸法を減らす時、たとえばネックを絞ったり、ショルダーを後ろに押したり、ネックの直径を変えたりするときに使われる。 ファイア・フォーミング(英語版)。ペアレント・ケースか、部分的に冷間加工した薬莢に、軽い弾頭とわずかな火薬を詰め、その弾薬を使う銃から発射する。他に、薬莢に少量の速燃性の火薬を入れ、その上に薬莢の口まで小麦クリーム(英語版)を入れて詰め物で蓋をした特製の空包を作成し、それを使って薬莢を拡げる方法もある。この方法は、薬莢の寸法を増やす時、たとえばネックを前方に移動させたり、ネックの角度を増やしたり、薬莢をストレートにしたりするときに使われる。 トリミング(切る)。通常の場合、冷間加工やファイア・フォーミングをした後、ケース・マウスは理想よりも長いので、正しい長さに切らなければならない。トリミングはリローディングをするときの通常の手順で、高い圧力のカートリッジは発射するたびに少しずつ伸びるので、マウスからはみ出た部分を定期的に切る必要がある。 弾頭の直径を変更する。これは「ネック・アップ」「ネック・ダウン」と呼ばれ、ワイルドキャット・カートリッジを作るときに最もよく使われる方法である。新しい口径にすることで、もとのカートリッジに比べて、弾頭の重さの選択肢が広がり、速度や威力や風の影響に対する耐性を大幅に向上させることが出来る。 ネッキング・バック (Necking back)。これは、冷間加工の一つで、ケース・キャパシティを減らすためにネックを後ろに押す。これはより短い銃身のための弾薬を開発するときによく用いられる。例えば、小銃弾を拳銃弾にするような場合である。 ブロー・アウト (Blowing out)。これはファイア・フォーミングによってショルダーを前に移動させ、ケース・キャパシティを増加させるものである。 ショルダー・アングルを変更する。ショルダー・アングルを直角に近づければ、薬莢内の空間は理想的な球形に近づき、より効率的に燃焼がおこなえる。同時にショルダーを後ろに移動させるのであれば、冷間加工を使う。ショルダーの位置が同じか、前に動かすのであれば、ファイア・フォーミングを使う。 薬莢の傾き(テーパー)を減らす。これはファイア・フォーミングによっておこなわれるが、カートリッジが円筒に近づき、ショルダー・アングルを変更するのと同じような効果が得られる。 リムを変更する。ワイルドキャット・カートリッジの加工としておこなわれるときは、精確な旋盤加工技術が必要なので、通常はメーカーのみがおこなう。通常はリムドからリムレスに、またはリムレスからリベイテッドに変更し、その銃の作動部が想定していた弾薬より大きなペアレント・ケースを装填できるようにする。逆に、薬莢にリムを追加するのは、通常は大手のメーカーによってのみおこなわれる。例えば、.45 Auto Rim、つまり、.45 ACP のリムド弾薬は、ムーンクリップなしでリボルバーから排莢できるようにしたものであり、.307 ウィンチェスター弾(英語版)のリムド弾薬.308ウィンチェスターは、レバー・アクション・ライフル用に開発されたものである。ハンドローディングする場合、リムレス薬莢に金属の輪をかしめて(スウェージ)から、旋盤加工することで、リムを追加することが出来る。しかし、これは非常に困難で集中力を必要とし、また、特別なスウェージング・ダイと、精確な金属加工用旋盤が必要になる。単に、必要な直径もしくはその直径になるようにリーマで削ったリムド薬莢を使って始めた方が、大幅に簡単である。 薬莢の長さを長くする。 薬莢を長くすると、通常は古い薬莢ではなく完全に新しい薬莢を使うことになるが、このような変更は通常はメーカーだけが可能である。既存の薬莢を薄くして引き延ばすことで、少し長くすることは可能ではあるが、これには特殊な機材と経験が必要である。通常は、薬莢の長さを延ばすよりも縮めるほうが、大幅に簡単である。
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