ロシアとソ連の砕氷船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 04:57 UTC 版)
ロシアは「イェルマーク」をはじめ、1900年頃から外航用の大型砕氷船を多数配備し、主に北極海航路へと就役させた。「イェルマーク」は船首にプロペラ1つ、船尾に3つを備えていた。また、航路を開くための航洋型砕氷船のほかに、港湾内で使用する港湾砕氷船も各主要港ごとに多数整備された。その配備先には、比較的温暖な黒海も含まれる。ロシア帝国国内で建造した砕氷船もあったが、多くはイギリスほか諸外国に発注したものであった。 ロシア帝国海軍では専用の砕氷船以外の軍艦についても、特にバルト艦隊へ配備された艦については、自力である程度の砕氷ができるよう、砕氷船に準じた船体構造を持たされていた。ロシア帝国海軍でバルト艦隊と黒海艦隊へ同型艦を配備する場合、両者の間で様々な設計変更が行われることが多かったが、これは純粋に技術進歩や建造工場の事情によるもの以外に、前者には砕氷能力があり後者にはないということに起因する要素も含まれた。 1932年には、ソビエト連邦はアルハンゲリスクからウラジオストクまでの北極海経由の商業水路を開発した。それまでのヨーロッパロシアと極東を結ぶ海路の要衝(チョークポイント)は、喜望峰回りやスエズ運河回りはイギリスに、パナマ運河経由はアメリカ合衆国に押さえられており、海氷に閉ざされているもののソ連本土の沖合を主に通る北極海航路の開発は急務であった。 1937年-1940年は軍事活動として砕氷船の建造が行なわれ、「ヨシフ・スターリン」級(船長100m、10,400PS)4隻が造られた。第二次世界大戦中のアメリカによるレンドリース法によっても、 3 隻の砕氷船を取得している。 第二次世界大戦後には大量の砕氷船が建造された。その目的は、調査用、ばら積み貨物用、タンカー、材木輸送用、軍事・国境警備用まで多岐にわたる。一部の砕氷船(原子力を含む)はフィンランドで建造されている。 特に、白海や北太平洋方面を中心に配備されている大型の国境警備艦は、そのほとんどが砕氷艦である。冬季には厚い氷に閉ざされる海域で季節を問わず活動しなければならない国境警備艦は、必然的に大型化した。たとえある程度の砕氷能力があっても、小型ではその能力に限りがあり、冬季の活動が困難になるためである。代表的な砕氷艦型国境警備艦である 97-P 設計では、満載排水量で 3525 t に達した。この艦は、海軍向けの同規模の軍艦に準じたレーダー装備を持ち、76 mm および 30 mm 口径の艦砲と自衛用の艦対空ミサイル複合を搭載している。 1959年には44,000PSの原子力砕氷船「レーニン」が竣工した。これは、世界初の原子力砕氷船で、原子力潜水艦を除けばソ連初の原子力船であった。1975年から運用開始した初代アルクティカ級砕氷船(10520型、75,000PS、約23,000t)は量産型の原子力砕氷船で、 6 隻が建造され、北極海航路へ就航した。そのうち、2020年現在 2 隻が稼動状態にある。これを更新する二代目アルクティカ級原子力砕氷船(22220型)も3 隻が建造中であり、2019年以降に就役予定となっている。また、7万トン級のリデル級原子力砕氷船も構想されている。 また、これらの航路啓開のための砕氷船とは別に、ソ連・ロシアでは砕氷船首を有する貨物船が多数運航されている。その中でも最大の船として、原子力砕氷船であるセブモルプーチ(10081型、39,436PS)が挙げられる。これらの原子力砕氷船とディーゼル・電気動力型砕氷船が、北極海航路をはじめとするロシア沿岸の航路を支えている。
※この「ロシアとソ連の砕氷船」の解説は、「砕氷船」の解説の一部です。
「ロシアとソ連の砕氷船」を含む「砕氷船」の記事については、「砕氷船」の概要を参照ください。
- ロシアとソ連の砕氷船のページへのリンク