マイクロソフトとの競合と協調
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/18 16:27 UTC 版)
「Linuxの歴史」の記事における「マイクロソフトとの競合と協調」の解説
トーバルズはマイクロソフトが過去にLinuxに対して脅威を感じていたことによる影響は皆無だったと述べたが、マイクロソフトとLinuxそれぞれの陣営の間では1997年から2001年にかけて数々の敵対的なやり取りがあった。最初に明白となったのは1998年、いわゆる「ハロウィーン文書」がエリック・レイモンドによって公開された時であった。これはマイクロソフトの開発者による、フリーソフトウェアがマイクロソフトに与える脅威や、それらの認識された脅威に対抗するための戦略を並べようとした短いエッセイであった。 マイクロソフトがWindowsとLinuxを比較評価した顧客の事例研究を "Get the Facts" と称して自社のウェブサイトに掲載したことによって、競合は2004年から新しい局面に入った。この事例研究ではアンケートや調査分析、マイクロソフトの支援による調査などを基に、業務用サーバ用途での信頼性、セキュリティ、総保有コストの面で、LinuxがWindowsより劣ると主張していた。 この反応として、商用Linuxディトリビュータはそれぞれにマイクロソフトのキャンペーンに対抗するために研究、調査、証明を公表した。ノベルは2004年末から "Unbending the truth" と題するウェブ上のキャンペーンを開始し、利点の概説に加え(とくにSCO対IBM(英語版)における事例の観点から)広く喧伝されたLinux運用の法的な信頼性への懸念を払拭しようとした。ノベルは多くの点で、とくにマイクロソフトの研究を引用した。IBMも "The Linux at IBM competitive advantage" と題してマイクロソフトのキャンペーンをかわすための一連の研究を公表した。レッドハットは "Truth Happens" と呼ばれるキャンペーンを開始した。 2006年秋、ノベルとマイクロソフトはソフトウェアの相互運用性と特許保護で提携する契約を発表した。これにはノベルとマイクロソフトいずれの顧客も他社からの特許紛争による訴訟対象とならない、とする契約が含まれていた。特許保護は非商用のフリーソフトウェア開発者にも拡大された。最後の部分は「非商用」ソフトウェアの開発者に限定されているという理由で批判された。 2009年、マイクロソフトはGPLv2のもとで22,000行のソースコードをLinuxカーネルに寄贈し、これらは追って受理された。このことは「歴史的な動き」として、またLinuxやオープンソースソフトウェアへのマイクロソフトの企業としての態度が改善された契機として言及されたが、これはマイクロソフトに顕著な優位性をもたらすことを約束し、またマイクロソフトへの法的措置を回避するという意味で、全く利他的な判断ではなかった。実際のところマイクロソフトはコードの寄贈を余儀なくされており、これはVyattaの主席エンジニアでLinuxコントリビュータでもあるStephen Hemmingerによって、Hyper-Vネットワークドライバのソース非公開バイナリに、GPLのもとでソースコードが公開されているコンポーネントをGPLに違反して静的リンクしていたことを指摘されたためであった。マイクロソフトはライセンス違反を解消するために、法的措置を回避するという名目ではなく、慈善的な行為という建前でドライバを寄贈した。かつてマイクロソフトはLinuxを「ガン」や「コミュニスト」になぞらえていた。 2011年、マイクロソフトはLinuxカーネルのコントリビュータで第17位となった。2015年2月、マイクロソフトはコントリビュータ企業の第30位までに入らなかった:10–12。 Windows Azureプロジェクトが2008年に発表され、後にMicrosoft Azureに改称された。Linuxはサーバベースソフトウェアの一部として統合された。2018年8月、SUSEはMicrosoft Azureプロジェクトのもとでクラウドコンピューティング用アプリケーションのための特殊仕様となるLinuxカーネルを製作した。マイクロソフトの代表者は、移植版カーネルについて「新しいAzure向けカーネルにより、顧客がSR-IOVにより高速化されたネットワークのような、新しいAzureのサービスの利点を迅速に享受できる」と述べた。
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