ポリプロピレンフォーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 08:23 UTC 版)
「発泡プラスチック」の記事における「ポリプロピレンフォーム」の解説
汎用樹脂を用いたもののうち、ポリプロピレンフォーム(PPフォーム)は比較的耐熱性が高い。PEよりも結晶化度が高いPPの発泡には混練や架橋の難しさや温度-粘度曲線の急激な変化など難点が多かったが、1969年にハーキュリーズが特殊な架橋剤を開発し、加圧発泡法による実用に耐えるスラブ状PPフォームの製造を開始した。1971年にはデュポンが押出発泡法によるシート成形を開始、1972年には東レが常圧下での放射線架橋フォームを開発し、1981年にはジェイエスピーがビーズ法の型内発泡成形(EPP)技術を確立した。 原材料 PPは加熱による粘度低下が急で、発泡壁形成が難しい。そのため架橋剤・架橋方法の選択が重要となる。放射線架橋では、ガンマ線放射などで生じさせたフリーラジカルを起点に架橋を起こさせるが、厚みのある製品には適応できない。化学架橋では、含有させた有機過酸化物を過熱で分解させて発生したラジカルを起点に架橋を起こし、多くの場合で多官能性モノマー(ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなど)を併用して架橋密度を上げる方法や、アジ化物を用いる方法、または官能基を持つモノマーと共重合させたポリプロピレンを用いる方法もある。なお、ビーズ発泡や押出発泡では架橋は行われない。 常圧発泡では、PP溶融温度よりも分解温度が高い分解型発泡剤を用いる必要があり、アゾジカルボンアミドなどが主に用いられる。これは加圧・押出発泡にも使われている。押出発泡やビーズ発泡では揮発型発泡剤が使われ、脂肪族炭化水素類やアルコールまたは不活性ガスが利用される。 製法・性能・用途 融点以上で急激な粘度低下を起こすPPで発泡体を得るには基本的に架橋が欠かせない。加圧発泡法は各種原材料を金型内部に密閉し、加熱加圧して化学架橋反応と発泡を起こして膨張させるバッチ製造法。金型によって発泡ガスの散逸が抑えられるため、スラブ状の高倍率発泡品が得られる。形状は金型に依存し、厚みのある成形が可能である。 押出発泡法は架橋をさせず材料を混練・溶融させた状態で口金から押出しながら発泡させ、連続的に成形する。揮発型発泡剤のみの使用では発泡体を得ることが難しく、デュポンは加熱したPPに可溶な溶媒を加えることで製造を可能にした。シート・板・棒状の成形品を得られるが大きなものは難しく、厚みは3mm前後が標準となる。成形品は打ち抜き加工やヒンジ特性が良好な(くり返しの開閉でも破断しにくい)ため、ボックスケースや通函など梱包・運搬用材料に使われる。 常圧発泡法は材料をシート状に押し出し、放射線または化学架橋をさせ、次に発泡剤の分解温度以上の熱をかけて発泡させることで、5mm厚程度のシート状成形品を得られる。架橋度を維持するために多官能性モノマーを使用する。このシートは深絞り成形が可能で、他の三大発泡プラスチックよりも耐熱性や耐薬品性に優れることから自動車内装のダッシュボードや天井材などに、また、低い吸湿性、高い断熱性、軽量な点から、目地材や断熱材などに使用される。使用量も多く、PPフォームの過半数は自動車用途に用いられる。 ビーズ発泡法ではEPSと同じくペレット状に押し出した材料を使用する。架橋は起こさず、揮発型発泡剤が用いられる。EPSや加圧発泡法同様、成形品の形状は金型に依存する。用途は耐熱性が若干求められる分野となり、梱包緩衝材の他に自動車のバンパーコア(芯材)や雑貨などにも使用される。
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