フォノ‐イコライザー【phono equalizer】
フォノイコライザー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 20:38 UTC 版)
「レコードプレーヤー」の記事における「フォノイコライザー」の解説
ウィキメディア・コモンズには、RIAA イコライザに関連するメディアがあります。 ダイナミックレンジを有効に活用するため、カッティング時に周波数に対してエンファシスが施される。したがって再生時に等化が必要となり、ピックアップ出力を受ける等化特性を持ったアンプはフォノイコライザーと呼ばれる。 カッターは入力信号に速度が対応する速度形だが(正確にいえば補正してそう見えるようにしている)、その特性のままカッティングすると低域で振幅が大きくなり、カッティングヘッドの振幅限界を超えたりトレースが困難になる上に、隣接する音溝と接しないよう送りピッチを大きくしなければならず、また垂直方向の振幅も大きくなるため音溝自体も太くなり、記録できる時間が短くなる。一方、高域では振幅が小さくなり S/N が悪化する。そのためカッティング時に 6 dB/oct. で高域をブーストし、周波数に対してほぼ定振幅となるようにする。ただし完全に定振幅にすると高域で速度が大きくなりすぎ、音溝を切ることが物理的に不可能になったり、トレース不可能となったりするので、完全な定振幅ではなくやや高域を抑えた特性とするのがよい。各レコードレーベルともおおむねそのような特性でカッティングしていた。ところがモノラル時代はその特性が統一されておらず、再生時にレーベルに合わせてイコライザー特性を切り替える必要があった。 しかし RCA が1952年から使い始めた "New Orthophonic" イコライザー特性と同じものが翌1953年に RIAA により推奨され、ステレオレコードに関してはこの RIAA イコライザー特性に統一された。現在市販されているフォノイコライザーの特性も基本的にこの RIAA イコライザー特性である。 上述のように音溝は周波数に対しほぼ定振幅で切られているので、振幅に対応した出力を出す振幅形のピックアップを使えばイコライザーの補償量が少なくて済む。振幅形の圧電型ピックアップは負荷インピーダンスを選ぶことでほぼ等化できてしまう上に出力電圧が大きいのでアンプが非常に簡単で済み、安価なポータブル電蓄などに賞用された。もっと高級なものでは圧電型ピックアップカートリッジ内にバッファアンプを内蔵したものも作られた。コンデンサ型・光電型・半導体型ピックアップなども振幅形で、やはりイコライザーの補償量が少なくて済んだが、これらは電源が必要な上に相互に互換性がなかった。 これら振幅形のピックアップに標準となりうる実力があったかなかったかは議論のあるところだが、史実としてコンポーネントステレオでは MI 型・ MM 型・ MC 型など速度形の電磁型ピックアップが標準となり、アナログレコード時代のアンプは電磁型ピックアップ用のフォノイコライザーを内蔵し、レコードプレーヤー接続専用のフォノ入力端子を備えるのが普通となった(フォノ入力端子とは内蔵フォノイコライザーの入力端子そのものである)。 しかし記録媒体がレコードから CD に移行すると、アンプからフォノイコライザーが省略されるようになった。単体のフォノイコライザーも現れたが、むしろレコードプレーヤーがフォノイコライザーを内蔵するようになった。更にはレコードプレーヤーでデジタルデータ化を行う、 USB 端子を備えたものも現れた。 フォノイコライザー入力は一般のオーディオ入力より高感度なので、レコードプレーヤー以外の機器やフォノイコライザーを内蔵するレコードプレーヤー(フォノイコライザー出力は一般のオーディオ出力となる)を接続すると歪んだ大音量が出てスピーカーなどを損傷する恐れがある。フォノイコライザーを内蔵するレコードプレーヤーも内蔵フォノイコライザーをスルーさせれば内蔵していないレコードプレーヤーと同等になるが、設定を間違えないようにしなければならない。 MM 型などのカートリッジは負荷インピーダンスにより高域特性が変化する。そのため入力抵抗を切り替えられるフォノイコライザーもあるが、 MM 型では 47 kΩが標準である。負荷容量によっても特性は変化するが、入力容量を切り替えられるフォノイコライザーはあまりない。負荷抵抗はフォノイコライザーの入力抵抗と同一とみなせるが、負荷容量はフォノイコライザーの入力容量に接続ケーブルの容量が加わることになるので注意が必要である。 MC 型カートリッジの出力電圧は通常 MM 型カートリッジの更に 1/10 (−20 dB) 以下であるため、 MM 型用フォノイコライザーを使用する場合はフォノイコライザーの前に昇圧トランスもしくはヘッドアンプを接続する必要がある。なお、よく誤解されているが、昇圧トランスに記されている一次側インピーダンスの値(10 Ωなど)は適合する MC 型カートリッジのインピーダンスの値であり、昇圧トランスの入力インピーダンスの値ではない。入力インピーダンスの値は通常その 5 倍以上ある。ヘッドアンプや MC 型用フォノイコライザーの入力インピーダンスは 100 Ωが標準である。 多くの場合、レコードプレーヤーにはアース端子またはアース線が付いているが、これは保安のためのアースではなく雑音防止のためのアースである。通常はフォノイコライザーのアース端子に接続するが、別体の昇圧トランスやヘッドアンプを使用する場合はそちらのアース端子に接続し、昇圧トランスやヘッドアンプのアース線をフォノイコライザーのアース端子に接続する。ただしフォノモーターのアースはフォノイコライザーのアース端子に接続する。
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