パロディ性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 08:49 UTC 版)
先述の通り、本作最大の特徴はタイトル通り『仮面ライダー』を(特に連載初期において)徹底してパロディ化していることにある。世界征服を狙う悪の組織と彼らが放つ怪人、そして迎え撃つ正義のヒーローという本作の構図は『仮面ライダー』そのものである。こうしたフィクション性の強い設定を、現実味のあるボクシングという題材に絡める事で生まれるギャップが本作の魅力のひとつとなっている。 登場する敵怪人ボクサーは、その多くが『仮面ライダー』同様にモチーフを動植物に求めており、中でもカマキリボクサー、クモボクサー、コブラボクサーらは仮面ライダーシリーズを通じて知名度の高いカマキリ、クモ、コブラをモチーフにした怪人達へのオマージュとなっている。特にクモボクサーが主人公にとって最初の敵となる展開は、多くの仮面ライダーシリーズ作品での〈最初に登場する怪人はクモがモチーフになる〉という暗黙の了解をなぞったものである。こうした怪人の登場順を『仮面ライダー』に求めるオマージュは、後に作者が石ノ森の原案を得て描いた『スカルマン』において、より徹底した形で再度行なわれている。 主人公「仮面ボクサー」自身も仮面ライダーにその源流が求められ、ボクサー風のコスチュームにも関わらずバイクを主な移動手段とし、「ライダーパンチ」ならぬ「ボクサーパンチ」を必殺技としている。主役ヒーローが元は敵組織側の技術から生まれた、いわば怪人の一種でしかないという設定は『仮面ライダー』の根幹をなすものだが、本作でもやはり主人公の「仮面ボクサー」の変身セットは敵組織が作ったものであり、(表現こそ深刻ではないものの)仮面ライダーと同様の葛藤を抱えている。 『仮面ライダー』原作者である石ノ森章太郎とその作品群を敬愛する作者だけに、石ノ森独特の漫画表現に対するパスティーシュも枚挙に暇が無く、それは第1話アバンタイトルで見られるような簡潔なコマ割りから突如大胆に大ゴマになるコマ展開のリズムや、随所に見られる空白を強調した作画などに顕著である。また特に作品タイトルのロゴタイプや、必殺技「ボクサーパンチ」の度に使われる「ボクサー」の描き文字は、石ノ森作品のロゴタイプのクセをとらえて独自に描かれた高度なパスティーシュとなっている。こうした石ノ森へのリスペクトを前面に押し出した『仮面ボクサー』の完結の後、同年1989年に作者は作家人生初の石ノ森原作による作品『仮面ライダーBlack PART⊗ イミテーション・7』(石ノ森の漫画『仮面ライダーBlack』のスピンオフ作品)を描いている。 これらと比してボクシング漫画としてのパロディ要素は少ないが、階級の違いを埋めるための無理な減量がテーマとなる第2話には、『あしたのジョー』における力石徹戦の影響を見て取る事もできる。当時の担当編集者ササキバラ・ゴウは評論対談集『あしたのジョーの方程式』において『仮面ボクサー』と『あしたのジョー』とのコマ割りや人物のポーズの類似を指摘しているが、これについて作者自身は『あしたのジョー』ファンとして無意識的な影響を受けているのが原因であり、意図しての事ではないと説明している。
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