ニドゥィ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/10 18:53 UTC 版)
ニドゥィという懲罰は、ハラハーから逸脱したり怠惰であったりした者を公共社会から隔絶することである。その期間は30日間であったとされている。これは社会的な制裁であるため、その影響はニドゥィを科された個人だけに及ぶものではない。 ニドゥィを科された者はその期間、喪に服す者のように髪を切ってはならず、衣服を洗ってもならない。何人たりとも彼の者を集会などに招待してはならない。ミンヤン(10人の徒)を集めるにおいても、彼の者を数に含めてはならない。決して彼の者の4アンマ(約2メートル)以内に座してはならない。もし彼の者が死んだなら? 裁判所は使者を遣わし、彼の者の棺の上に石を置く。これにより彼の者を石打の刑に処し、社会から隔絶されたものとする。彼の者に哀悼の意を表す必要はない。また、彼の者の埋葬に随行する必要もない。 — ラムバム、『ミシュネー・トーラー』 ヒルホット・タルムード・トーラー 7:5 ただし、4アンマ以内に座すことについては、ニドゥィを科された者の妻や親しい友人だけは免除されていた。また、教育を施すことも許されており、共に仕事をすることも禁じられてはいない。さらには、ニドゥィを科された者でも10人の賢者(ラビ)の許可があればニドゥィを解かれることもある(後述のヘーレムも同様)。 誰にニドゥィを科されたのかを理解しながら、彼の者が夢のなかにあるのなら(正気でないのなら)、ハラハーに精通した10人は、彼ら自身に降りかかる問題がない限りにおいて、彼の者のニドゥィを解かねばならない。問題がない限りにおいて、ミシュナーに精通した10人は、彼の者のニドゥィを解かねばならない。問題がない限りにおいて、タナハの出来事に精通した10人は、彼の者のニドゥィを解かねばならない。問題がない限りにおいて、精通していない10人でも、彼の者のニドゥィを解かねばならない。もしその場に10人もいないのであれば、3人でも構わない。 — ラムバム、『ミシュネー・トーラー』 ヒルホット・タルムード・トーラー 7:11 どのようにしてニドゥィあるいはヘーレムから解かれるのか? このように告げる。「この者は、認可され、解放された。」 もしその場に同席していないのなら、「彼の者は、」と告げる。 — ラムバム、『ミシュネー・トーラー』 ヒルホット・タルムード・トーラー 7:4 ニドゥィの適用には2種類があったとされている。ひとつは賢者の威厳を侮る者(自分よりも身分の低い者)に対してその賢者自身によってニドゥィを科す場合である。 賢者自らが自身の名誉にかけて、その名誉を侮るイスラエルの民にニドゥィを科すことができる。この場合、証人は必要ない。ニドゥィとされる彼の者に警告はいらない。その賢者が望むまで許す必要もない。もしその賢者が死んだ場合、ニドゥィの解除を望む者が3人以上いないのであれば、彼の者のニドゥィは継続される。その賢者が生前にニドゥイの解除を望んでいたのなら、自身の権利でそれを行っていたはずである。 — ラムバム、『ミシュネー・トーラー』 ヒルホット・タルムード・トーラー 6:15 もうひとつは裁判所においてハラハーの違反者に対して科される社会的な制裁で、以下に上げる24項目のうちのひとつでも犯せば男性であれ女性であれニドゥィの対象となる(『ミシュネー・トーラー』 ヒルホット・タルムード・トーラー 6:18におけるラムバムによる分類)。 賢者(ラビ)を愚弄し、あまつさえその賢者の死後においても愚弄する者。(バブリー・マセヘット・ベラホット 19a) 裁判所(ベート・ディン)からの使者を侮辱する者。(バブリー・マセヘット・キドゥシーン 70b) 自分の友人を奴隷呼ばわりする者。(バブリー・マセヘット・キドゥシーン 28a) タナハはもちろん、タナハにまつわる賢者の言葉およびその内容を軽んじる者。(バブリー・マセヘット・ババー・カマー112bなど) 裁判所からの召喚を拒否し、決められた時間に出廷しない者。(バブリー・マセヘット・エドゥヨット 5:6) 裁判の結果を受け入れない者。このような者には受け入れるまでニドゥィを科す。(バブリー・マセヘット・ババー・カマー113a) 狂犬や壊れかけの脚立など他人に危害を加えかねない物を所持している者。このような者には危険が去るまでニドゥィを科す。(バブリー・マセヘット・ババー・カマー15b) 自分の土地を異教徒に売る者。このような者には境界を接するユダヤ教徒がこうむる損失のすべてを受け入れるまでニドゥィを科す。(バブリー・マセヘット・ババー・カマー112aなど) 異国の法廷で、ユダヤ教徒の隣人に経済的な損失をもたらすべく彼に不利な証言する者。このような者には賠償が済むまでニドゥィを科す。(バブリー・マセヘット・ババー・カマー113bなど) 屠られた動物の肉を独占して他の祭司(聖務者)に分配しない祭司。このような者には分配するまでニドゥィを科す。(ミシュナー・ヒルホット・ビクリーム 9:8など) エルサレム外の慣例に従わず第2のヨム・トーブ(祭日)を侮る者。(バブリー・マセヘット・ペサヒーム 52a) 過越しの晩の夜中を過ぎても仕事をする者。(バブリー・マセヘット・ペサヒーム 50b) みだりに神の御名を口にしたり、無意味な誓いを立てたりする者。(バブリー・マセヘット・ネダリーム 7bなど) 神を冒涜する行為へ大勢を誘う者。(バブリー・マセヘット・モエッド・カタン 3:1) アヒラット・コダシーム(聖なる食事)をエルサレム外の場所で催し、それに大勢を誘う者。(バブリー・マセヘット・ベラホット 19a) ユダヤ暦ではなく異国の暦に合わせて年数を数える者。(バブリー・マセヘット・ベラホット 63a) 盲人の前に障害物を置く者。(『レビ記』 19:14など) ミツヴァー(律法)の実践に怠惰な者。(バブリー・マセヘット・モエッド・カタン 3:1など) カシュルートで禁じられた動物を屠る者。(バブリー・マセヘット・サンヘドリン 25a) シェヒター(屠殺)のさいに賢者の前で屠殺用の刀を調べないショヘット(屠殺人)。(ミシュナー・ヒルホット・シェヒター 1:26) 理解しようとせず頑なになる者。(バブリー・マセヘット・ニダー 13a) 妻を離縁しながらその女性と関係を重ね、あまつさえ子供をもうける者。この場合は両者とも裁判所に出廷させてニドゥィを科す。(ミシュナー・ヒルホット・イスレー・ビアー 21:27) 不祥事のある賢者。(バブリー・マセヘット・モエッド・カタン 17a) ニドゥィに値しない者にニドゥィを科した者。(バブリー・マセヘット・モエッド・カタン 17a)
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