ドイツ連邦共和国首相とは? わかりやすく解説

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連邦首相 (ドイツ)

(ドイツ連邦共和国首相 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/11 07:49 UTC 版)

ドイツ連邦共和国
連邦首相
Der Bundeskanzler der Bundesrepublik Deutschland
ロゴマーク
連邦首相旗
現職者
フリードリヒ・メルツ(第10代)
Joachim-Friedrich Martin Josef Merz

就任日 2025年5月6日
呼称 : Herr Bundeskanzler / Frau Bundeskanzlerin
: Exzellenz : His/Her Excellency閣下
所属機関 連邦政府
庁舎 連邦首相府
指名 ドイツ連邦議会
任命 連邦大統領
フランク=ヴァルター・シュタインマイアー
任期 原則として4年
(連邦議会にて信任決議が否決された場合のみ、任期途中で議会を解散可能)
初代就任 コンラート・アデナウアー
創設 1949年5月24日
職務代行者 副首相
ラース・クリングバイル
ウェブサイト 連邦首相府公式サイト
(ドイツ語)

連邦首相(れんぽうしゅしょう、ドイツ語: Bundeskanzler)は、ドイツ連邦共和国政府の長である首相。儀礼的国家元首である連邦大統領の下で、行政権を司る。

連邦首相の男性形はBundeskanzler、女性形Bundeskanzlerin。歴史的由来から稀に連邦宰相(れんぽうさいしょう)と訳されることもあるが時代錯誤的であるため、あまり多くはない。

呼称

連邦首相のドイツ語での正式名称は「Bundeskanzler」であり、「Bund」は「連邦」を意味し、「Kanzler」は「首相」を意味する。ちなみにドイツ語において「大臣」という言葉は「Minister」で、諸外国の「首相」はドイツ語で「Premierminister」ないし「Ministerpräsident」である。これとは異なるという意味で「宰相」の訳を当てることもある[注釈 1]。また、連邦制であるドイツの各州政府の長は「Ministerpräsident」(大臣主席)であり、これも首相(州首相)と訳される。同じくBundeskanzlerという官職が現代ドイツの前身である北ドイツ連邦にも存在したが、こちらは連邦宰相と訳されることが多い。

選出

3人の連邦首相(左からキージンガーシュミットブラント1979年10月ボンにて。)

ドイツ連邦共和国基本法では議院内閣制が採用されており、連邦首相は連邦大統領の推薦に基づき、ドイツ連邦議会下院)の議員の中から過半数の賛成によって選出され、内閣を組閣する。ただし、連邦議会選挙で採用されている小選挙区比例代表併用制の下では、ひとつの政党が単独で過半数の議席を得ることは極めて困難であるため、連邦議会の過半数の信任を得て連邦首相が選出されるには、複数の政党で連立政権を組む必要がある。そのため、首相選出の前には各政党間で多数派形成のための詳細な政策協議が行われる。任期は4年間で、連邦大統領によって任命される。

連邦首相は議会に責任を負っており、連邦議会には連邦首相に対する不信任決議権が認められている[1]。この不信任決議の対象は連邦首相である(内閣に対するものではなく各大臣に対しては法的に辞職を義務づける不信任決議制度は採用されていない)[2]。この連邦首相に対する不信任の提出は、あらかじめその過半数で後任首相を選出した上で行う必要があり、連邦大統領に対して連邦首相の罷免を要請することが要件とされている(建設的不信任の制度、Konstruktives Misstrauensvotum[1]

倒閣だけを目的とした内閣不信任が乱発されて政治が不安定化し、最終的にナチス党の権力掌握を許してしまったヴァイマル共和政への反省から、建設的不信任制度が採用されることになった。これまでのところ、これが成立したのは1982年ヘルムート・シュミット政権が倒された時のみである。

権限

ベルリン連邦首相府 (Bundeskanzleramt)
連邦首相の執務室。机の背後の壁には、オスカー・ココシュカによって描かれた初代首相コンラート・アデナウアーの肖像画が飾られている。
西ドイツ時代の首都・ボンにある第二首相官邸(シャウムブルク宮殿

連邦首相は大臣の選任を行って内閣に相当する連邦政府を構成し、行政権を司る。基本法第115条では、防衛事態であると連邦議会が認定した場合、ドイツ連邦軍の指揮権は首相に属するとしている。

なお、ドイツ連邦共和国基本法では、連邦首相はドイツ連邦議会の解散権を持たず、連邦大統領が解散を行うとされているが、解散が出来るのは、連邦議会での連邦首相に対する指名選挙が3回選でも統一見解を得ない場合と、連邦首相に対する信任決議否決された場合のみとされている(建設的不信任制度により、不信任決議は同時に新首相を選出しなければ成立しないため、議会の解散を目的として行うことはできない)。このため、与党側が随意に連邦議会を解散して総選挙に持ち込むためには、与党議員に信任決議の採決を棄権させるなどして、わざと内閣信任決議案を否決させるという手を使うことになる。ただし、これには解散権を持つ連邦大統領の同意が必要であり、実際にこの方法で解散が行われたのは1972年ドイツ連邦議会選挙1983年ドイツ連邦議会選挙2005年ドイツ連邦議会選挙2025年ドイツ連邦議会選挙の4回のみである。憲法学者などの中には、こうした手法は基本法違反であるという声もあり、1983年の解散時には連邦憲法裁判所にて違憲審査が行われたが、この時は4対3の僅差で信任案否決が認められた。また、2005年の解散時にも違憲審査の実施を求める提訴があったが、連邦憲法裁判所は提訴を却下した。

歴代ドイツ連邦首相

脚注

注釈

  1. ^ 日本の外務省のサイト(外務省:アンゲラ・メルケル連邦首相略歴)や駐日ドイツ大使館のサイト(ドイツ大使館-アンゲラ・メルケル ドイツ連邦共和国首相 略歴)、新聞などの報道では「連邦首相」「首相」としている。

出典

  1. ^ a b 主要国の政治行政機構-議院内閣制に関する参考資料(1)、衆議院、2021年6月16日閲覧
  2. ^ 上田健介「ドイツ宰相の権限行使と大臣・内閣との関係」『近畿大学法学』第52巻第1号、近畿大学、131-181頁。 

参考文献

関連項目

外部リンク


ドイツ連邦共和国首相

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 03:43 UTC 版)

ヴィリー・ブラント」の記事における「ドイツ連邦共和国首相」の解説

1969年連邦議会選挙第二党社会民主党(SPD)は第三党自由民主党(FDP)との連立政権誕生させ、ブラント戦後西ドイツで初のドイツ社会民主党出身連邦首相となった第一党キリスト教民主同盟社会同盟初め下野した。そして連立組んだ自由民主党シェール党首副首相兼外相におき、同じ自由民主党からハンス=ディートリヒ・ゲンシャー(後のコール政権外相)を内相においた。そして社会民主党からヘルムート・シュミット国防相に、カール・シラーを経済相に、アレックス・メラーを財務相に、キージンガー政権法相だったホルスト・エームケ連邦首相府長官に、西ベルリン市長時代からの腹心エゴン・バール連邦首相府次官東方問題担当に、そしてヘルベルト・ヴェーナー社会民主党議員団になった

※この「ドイツ連邦共和国首相」の解説は、「ヴィリー・ブラント」の解説の一部です。
「ドイツ連邦共和国首相」を含む「ヴィリー・ブラント」の記事については、「ヴィリー・ブラント」の概要を参照ください。

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